黒い予感


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「やっぱり翔様×いおりゅんが一番よ!」
場の雰囲気に合わないくらい明るい声が響く。
「そうでしょうか、私はいおりゅん×翔さんのほうがスキです。」
「くぅっ!やるわね、だけどそれは間違いよ。」
険悪な空気が二人を包みこむ。
決して相容れぬ存在。二人の間には見えない大きな溝があった…。
「見かけより強情なコね〜。……ま、いいわ。その勝負はお預けといきましょう!
それよりもさぁ……」

※オタクはよく喋ります、しばらくお待ち下さい。




「…でね、今度東京で開かれるイベント…あっ、こみっくパーティー、略してこみパって
言うんだけどね?今度一緒に行こうよ!」
「恐そうです、それにまだ東京って行ったことないので…」
「大丈夫よ!いろいろなお店とか〜そう、楓ちゃんに似合いそうな服とか…
だけどこれは自前のほうがいいわね〜。うん、私も手伝ってあげるから自分で作っちゃいなよ☆」
「え、えと…はい…」
よく喋る女、玲子の勢いに、少女は半ば強制的にうなずいてしまう。
「大丈夫、楓ちゃん素質あるよ!こみパにだってす〜ぐになじめちゃうって。」

玲子の話はまだ終わらない。

まだ二人は血生ぐさい争いとは無縁の処にいた。
偶然……そういってしまえばそれまでだ。
だが、楓は常に勘を働かせながら安全なほう安全なほうへと玲子を導いていた。
もちろんエルクゥの――鬼の力ではない。
長年の(前世の記憶からの)生き残るための勘。ただの勘だが。
姉妹達からよく『楓の勘は当たるからな〜』と言われるほど鋭敏だ。
だが、それも限界に近づいていた。
黒い感触。もう…この島には安全な場所は皆無ということなのだろうか。
(お姉ちゃん…初音……耕一さん……!)
楓はブルッと身を震わせた。
まだ彼女は千鶴や梓、初音…そして耕一の身に何が起きているのか全然知らない。

「でね…――――――――――♪」
玲子の話はまだ、終わらない。

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