作戦


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「……(うぅん)。」
「あ、姉さん、気がついたのね。」

来栖川芹香が目を覚まして最初に見たものは自分を介抱する妹と
見知らぬ二人の女性だった。

「……。」
「あ、この二人は 倉田佐祐理 さんと 牧村南 さん、味方よ。
倉田さんのほうは前に話した事があったわよね。」

綾香が手短に事情を話してくれる、どうやら儀式を邪魔されて気絶していたらしい、
多少結界にダメージを与える事は出来たがまだ魔力は回復していないのは残念だった。
この二人にも敵意はないようだ、綾香が味方だというのなら間違いはない。

「……。」
「そうよ、姉さん。この二人も同行者が魔力を感知できるのでここに来たってわけ。」
「……。」
「あ、その二人はね…。」

『あぶない!』

二人の会話はそこで中断させられた、社から飛び出した光の塊が社を見ていた青い髪の少女を
襲ったのだった。さいわいもう一人社に注意を向けていた黒髪の少女に突き飛ばされたおかげで
直撃を免れたようだがどこかにダメージを追ったのかすぐに立ちあがれないようだった。
芹香は無言で立ちあがろうとしたがよろけて綾香にすがるような格好になってしまった。
光はなおも二人に襲い掛かるかのように不気味に動きつづけている。

「……。」
「姉さん、無茶よ。姉さんだって見た目は平気そうだけど結構なダメージを受けているはずよ。
足が震えているじゃない。」
「……。」
「『私だけじっとしているわけにはいかない。』って?そんな体で満足に戦えるの?」
「……!」
「…昔から姉さんは結構頑固なところがあったわね、でもそんな姉さんが好きだったわ。」
「……。」
「姉がピンチのときに助けてやらない妹がどこにいるっていうの?私もサポートするわよ。」

「あ、あれは!」

佐祐理がそう言って指差した先の光はもはやただの球状ではなく少女の形を取っていた、
背中から生える翼は幼さの残る少女の顔を照らす太陽のように左右に大きく広げられていた。

「姉さん、あれは何なの?」
「……。」
「そう、あれが結界の守護者なのね。」

先ほど青い髪の少女 リアン を突き飛ばした黒髪の少女 川澄舞 が少女に何か尋ねていた。

「あなた、誰?」
「…我が……名は……かん…な、…立ち去…れ。」
「だめ、私はみんなと一緒に帰る。絶対に逃げない。」
「…さもないと。」
「さもないと?」
「排除…する。」

その言葉が終わらないうちに翼を持つ少女、神奈のまわりに現れた光の塊が舞を襲う。

「!」

舞の卓越した運動神経にとって光の塊の速度は脅威ではなかったが当たればどうなるかわからない
という恐怖は大きなものだった。

「……立ち去…れ。」

先ほどと同じ言葉を繰り返す神奈に対して舞は無言で手にした竹槍を向けた、

「え、姉さん、何?」
「……。」
「ちょっと、舞さん聞いて!その子はとっても苦しんでるって!」
「……。」
「何かに操られているだけ、その子はほんとは悪くないって!」

綾香の言葉を聞いた舞はほんの一瞬躊躇した、確かに力には悲しみが感じられたからだ。
その刹那また別の塊が舞を襲う。

「!!!」

少し掠っただけだが体の内側を少しもっていかれたような奇妙な感触、よろける舞に新しい
別の塊が襲いかかる。

「バリアー!」

舞の前に立ちはだかったリアンは両手を前に突き出した、手のひらに淡い光の膜が広がる。
薄い氷同士がぶつかり合うような音がして舞に襲いかかった光の塊ははじけ飛んだ

「やっぱり結界の力が少し弱ってる、今ならあれが出来るかも。」
「何をするの?」
「舞さん、私を守ってください。」
「?」
「今からあの女の子の心と接触します、説得してみますがその間無防備になるので
私を守って頂けませんか?」
「……。」
「姉さんもやる気よ、もちろん私もだけどね。その案に乗るわ。」

近づいてきた双子のようにうりふたつな少女達はリアンに向かってそう言った。
どうやら先ほど倒れていた三角帽子の女性は無事だったようだ、静かだが深い海のような
魔力を感じる。

「佐祐理と南さんは危ないから離れていて。」
「わかりました、いっしょに帰ろうね、舞。」

舞、綾香、芹香はリアンを囲むように正三角形の位置に身を置いた。
舞の竹槍と綾香のグローブには青白い光がともる。

「……。」
「わかったわ、姉さん。これでさっきのバリアと同じことが出来るのね。」
「(こくん)」

「ではいきます!」

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