接触


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気が付くとリアンは上下の間隔もない空間を漂っていた

(何とか接触には成功したみたいですね、まずは神奈さんの本体を探さなきゃ。)
(前になつみさんのココロを探したときのように集中して。)

空間にはいろいろな感情が満ちていた、小さな想い、憎悪、苦しみ、そして大きな悲しみ。
想いに直接晒されているリアンは魔力だけでなく精神そのものも打ち砕かれるように感じた。
想いに押し流されないようにしながら必死に集中を続ける、そしてようやく
数多くの負の感情の中に一筋の切れ目を見つけたリアンはその中に飛び込んでいった。
切れ目の中にいたのは小さな女の子だった、リアンから離れたところでうずくまっている。

(あなたが神奈ちゃん?)
(近づかないで、もういや、誰も傷つけたくない、こないで。)
(どうしたの、私は何もしないよ、大丈夫。なぜここにいるの?)
(私は大きな私から切り離されてここに連れてこられたの、そのときに少しだけ私は
変えられてしまった、空に帰りたい、誰も傷つけたくない。悲しい記憶を増やしたくない。)
(帰りたいの?)
(帰りたい、鳥たちといっしょにどこまでも空を飛び回りたい。)

どうやら何か大きな力の一部を分離させてここの結界の礎としているのだろう、切り離された
人格の一部にこれだけの自我があるということは本体はすさまじい力があるに違いない。
でも人格があるということは協力を伺えるということだ。彼女と変化させられた人格とを切り離せば
彼女は空へ帰り結界は力を無くすだろう。

(私も空を飛ぶのは大好き、こっちの世界に来てからはあまり出来ないけどグエンディーナに
いた頃はよくホウキに乗って空を飛んでた。)
(お姉ちゃんも空を飛べるの?)
(飛べるよ、風が頬にあたる感じが気持ちよくっていつまでも飛んでいたい位だった。)
(でももう私は飛べない、私の一部がここから私を出してくれない。)
(私が協力する、大好きなお空に帰ろう。)
(ほんと?本当に帰れるの?)
(約束する、私もがんばるから神奈ちゃんもがんばって。)
(ありがとう、じゃあいやな私のところに案内するね。)

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