惑い。


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……水浴び? 水浴びしてるの? あの人。
ごくり。……な、なんて無防備。
……うわあ、なんてすげえ身体をしてる人だ。
水汲みに行った浩平は、そこで綺麗な女性が水浴びをしているのを見た。
真っ裸。……オレに見てくれとでも云うような感じじゃないか!
し、しかしここで固まっているわけにもいかん、早く水汲んで帰らんといかんのだが、
い、いかんせん、動けん……男の性じゃないか、ゆ、許してくれっ……。
見たいに決まってるだろ! たとえそれが誰の裸でも、覗きをしたいっていうのは男の願望だ!
たとえそれが七瀬の裸でも、オレは覗きたいと思ってしまうだろう。
況やあんな綺麗な人だぜ? 覗きばんざーい! 覗きばんざーい!
そうこうしている内に、思わずがさり、と物音を立ててしまった。
「誰っ!?」
と、女は気付いてこちらを見遣った。まずい、隠れなければ……
それと殆ど同時に、男の太い声も聞こえてきた。
「郁未ちゃん、どうしたっ!」
「だ、誰かが覗いてたっ……」
影から見えるは……
なんて、筋骨隆々な男なのだ。逞しい。自分とは大違いだ。
しかし、格好が間抜けだ。何だ、あの……女性ものの……スカート?
バカじゃん、あいつ。浩平は笑いを隠せなかったが、なんとか耐えた。
――次の瞬間、浩平は、その女性の名前に驚く事になった。
郁未――それは、確か、葉子が捜していた名前ではなかったか?

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