静かなる格闘


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夜明け。
スフィーの格闘はまだ続いていた。

たかが魔術書かもしれないが、スフィーが必死になるのには訳があった。
魔力の流出が止まらないのだ。
スフィーの腕にはリングがはまっている。これと同じリングを宮田健太郎(095,既に死亡)
もはめている。このリングは本来、スフィーから健太郎に魔力を供給する役目を持って
いる。健太郎が死んだ今となってはもう役立たずになるはずなのに、今でも少しずつ魔
力が流出しているのだ。
そこで失われる魔力を補給しなければならないのだが、かつて健太郎と共に過ごした五
月雨堂の中のような「気」が、この島には全く感じられなかった。
魔力の流出の結果、スフィーの体は少しずつ縮んでいく。現に今着ている服も肩周りがゆ
るくなってきている。
こんな状態で、「マジカルサンダー」なんか使おうものなら…

とにかく、魔力の補充が最優先。
スフィーの格闘は、まだ終わりそうにない。

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