Rose Bus


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牧部なつみ(079)は支配空間を作り"贄”を狩るための
場所を探すため歩き回っていた。
幸いなことに"動いている人"に遭遇することは無かった。

ふとなつみが足を止める。
「人の…死体ね」
背丈はそれほど大きくない、黒い制服を着た男子…
片腕が切断され、背中には無数の針のある…

佐藤雅史(042)である。

目は見開いたまま事切れていた。
余りにも残忍な殺し方に、なつみは名の知らぬ彼に同情する。
(幾らなんでも…こんなことって…)
(店長さんも…この人のように殺されたの…?)
(憎い…憎い…店長さんを、この人を殺した人が…)
(この"ゲーム"を楽しんでいる人が…)

なつみは中に何かの詰った瓶を見つけた。
ラベルの無い、錠剤が沢山詰った…
が、沢山とは言っても幾らかは使ってあるらしい。
(何の薬か分からないけど…贄に試してみよう)

他にそれらしいものが無いと分かると、なつみは静かに立ち去った。

時間も大分過ぎ、日が暮れかかった頃に
ようやくアジトにするべき場所についた。
孤島にある割には大きめで4階建て、鉄筋で出来た…学校。
此処も矢張り人の気配は無かった。
とはいえ用心するに越したことは無い。
外回り、各教室、屋上などを調べまわることにした。

(……!)
一番最初に目に付いたのが黒髪の少女。川名みさき(028)
腕や腰がへしゃげ、胸に矢が刺さり、大量出血していることからも
彼女もまた誰かにやられたのだ。
故意か偶然か、高い所…屋上からだろうか…から転落させて。

又一方で。
今度は大量出血した跡を見た。
場所は保健室のベッド。寝ている無防備な人を攻撃したのだろう。
立川郁美(056)は殺された後誰かに供養してもらったのか、
布団がかぶせてあった。

(参加者に優しい人もいたんだね。)
(私には…この人のように供養することは出来ないよ。)
(きっと同じようなことをこれからするのだからね…)

二人の死者を看取るうちに完全に日は暮れてしまった。
電気はスイッチを入れてもつかない。
仕方なく月明かりを頼りに行動する。

罠を張る場所を1-Aと書かれた教室に決めた。
正面玄関から入って直ぐ右にある場所。直感的に最初に入りそうな所だ。
教室の中には教壇、黒板、数十個の机など…ごく一般的な教室だった。
牧部なつみ(079)はどの椅子、机にも座らず教室の隅で膝を抱えている。
丸一日歩き、3人もの死体を見て肉体、精神共にかなり疲れているのだろう。

「怖い…やっぱり怖いよ…
何時襲ってくるか分からない相手に…
目の前に武器を向けられたりしたら…
店長さん…健太郎さんの敵なんて…」
『ふふふっ、だいじょうぶよ』
突然声をかけられた。自分の中のもう一人の私…ココロに。
『健太郎さんに会えなくても…心の中に健太郎さんはいる。
一度きりとはいえ、スフィーの魔法を打ち消した。
…ここに自分だけの支配領域を作れば負けるようなことは無いよ』
「でも…鉄砲なんかを打ってくるのよ」
『鉄砲なんてバリアを張れば防げるわ。支配領域内なら…
あなたは、いや私達はそれが出来る筈よ』
「…身も知らぬ人を贄にするなんて…」
『じゃあ身も知らぬ人を殺してもいいの?
健太郎さんは殺された。今日3人も死体を見つけた。
余りにも残酷じゃない?』
「でも…」
『いい、健太郎さんは死んだの。復活させるのも無理。
健太郎さんを探して下手に動き回っていては逆に殺されるだけよ。
だったら、せめて健太郎さんの敵を…そう決めたじゃない』
「…うん…」
『結界が張ってあると、これだけでも疲れるわね…
じゃあ寝るわ。おやすみ、なつみ…』
「おやすみ、ココロ」

こうして夜がふけてゆく…

【ドラッグ(未識別) なつみにより回収】

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