死者と、罪、罰、誤解
どのくらいの時間、そうしていたのだろう?
緒方英二の命の灯火は、今まさに、消えようとしていた。
(目がかすんで、よく見えない……)
周りの様子も見えなかったが、女の子が一人、自分を見下ろしているのが見えた。
「……痛いんだ……殺してくれないかな、僕を」
途切れ途切れではあるが、驚く事に声ははっきりしたものだった。
「…自分から命を捨てるんですか?」
少女が問いかける。
「もう助からないよ。だったら、早く楽になりたい」
笑う。自嘲の笑みだ。
少女は何も言わず、自分に向けて何かをつきだしたようだった。
それは銃だったのだが、英二にはわからなかった。
「人一人助けることが出来なかったなぁ……
……約束破って、すまなかったな……少年」
本当に申し訳なく思った。
「…誰かを守ることを、約束してたんですか?」
「……そうだよ……でも、出来なかった」
言うと、少女は銃を下げ、言った。
「…それはあなたの罪です。苦しみ続けて、死んで下さい。
…それが、あなたに与えられた罰です」
少女の言葉に英二は驚き、次に微笑んだ。
「そうだな……君の言う通りだよ……」
そして時間が流れる。
「帰りたかったなぁ……理奈?」
「…誰かを助けられなかった罪は重いです」
英二の死を看取り、茜は言った。
自分の姿を、英二に重ね。
祐一に会い混乱している心も、今はもう、落ち着いている。
少なくとも、自分ではそう思った。
気を取り直し、歩き出す。
「あなたが、お兄ちゃんを殺したの!」
理奈の叫ぶ声が、その場に響いた。
その声は余韻を残し、やがて森の中に消えていく。
「…誰?」
012緒方英二 死亡
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