一つの終焉(中編)
その隙をついて、一気に間合いを詰める影。
「――!」
弥生が体をを向けた時にはもう遅かった。
もはや銃を構える暇すらない。
雪見が手にしていたのはサバイバルナイフ。
遮蔽物が多く、命中率が低いことを考慮して出た行動はこれだった。
そしてそのまま脳天に弧を描いて振り下ろされる――!
シュンッ!!
ほぼ同じ速度で割りこんでくる風を切る物体。
「――!!」
幾らかの恐怖と死線を乗り越えてきただけでこんな動きができるのだろうか。
むりやり体をよじってひねる。
「ぐぅっ!」
刹那、傷ついた胸に走る鈍い衝撃。
そして先程まで雪見の頭があった空間を音速で通りすぎる白い光――
弧を描いたナイフはわずかに狙いをそれ、柔らかい地面に突き刺さった。
その間、弥生は腰に下げていた凶器をそのまま雪見に叩きつける。
ガシャーン!!
思わず差し出した雪見の左腕が見る間に赤く染まっていく。
「うああっ!!」
押し付けた反動で、そのまま後ろに転がり、森の闇へと消えていく弥生――。
今、散弾銃は押そうが引こうが弾を撃てる状態になかったからだ。