お姉さんなんだよもん


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「ぴろー、ぴろー!」
沢渡真琴と椎名繭はぴろを探しながら歩いていた。
大声で叫びながら歩くということは自分の居場所を第3者に教えているということに気付かずに…
「あうー、全然見つからないよー、何処行ったんだろう?」
「みゅ〜」
「もう、疲れちゃったよ〜」
と、そのまま近くの木に寄りかかった。

そのとき、『カカカッ』と聞きなれない音が耳元で聞こえた。
振り返ってみると、その寄りかかった木に釘が数本刺さっているのが見えた。
「何これ?」
真琴ははじめわけが分からなかった。
するとまたすぐに『カカカッ』と同じ音がして釘の数がさらに増えた。
そうなって、初めて自分達が狙われてることに気付いた。
「うわっ!あぶないじゃない!!」
と叫んだとき、真琴の右手には釘が刺さっていた。
「って、いったーい!」
なおもまだ釘は飛んでくる。
「うわわっ、こうゆう時は漫画で見たように、…逃げるのよっ!」
そういって繭の手を握り森の中へと走りこんでいった。

「ちっ、もう少し近づかないとこいつは命中率が悪いぜ」
そういって、藤田浩之が姿をあらわす。
「何も反撃してこないってことは、あいつらたいした武器は持ってないってことかな?
 とりあえず一度狙った獲物は逃しはしないぜ!っと」
と言って藤田浩之も彼女らの跡を追った。

「な、なんなのよ、あいつ!包帯とか巻いてるくせに全然平気っぽいじゃない」
「みゅ〜♪」
必死で逃げる真琴に対して、繭は鬼ごっこでもしているのかと思われるぐらい、あっけらかんとしていた。
そんな繭の顔を見ながら真琴はあることを決心した。
「そうだ、真琴はお姉さんなんだもん!絶対守ってあげるんだから!でもどうやって…」
そんなことをつぶやきながら走りつづけてると吊り橋らしきものが見えた。
「そうだ、これを渡った後に切っちゃえば…」
そう考え橋に近づいてみると、もうすでに何者かによって切られた後だった。
「うそ…」
「みゅ〜」
一気に追っ手を引き離すどころか、追い詰められたことに真琴は愕然とした。
周りを見渡してみると人が隠れるような場所はあるのだが、
たとえ、隠れたとしても少し探せばすぐに見つかるようなところばかりである。

突然、真琴は繭の手を引いて、木陰に座らせる。
「いい、ここから動いちゃ駄目だからね♪」
「みゅ〜」
真琴はとびきりの笑顔を見せながらそれだけを言うと、
近くにあったそれなりに大きな石を持ち上げると崖の下に放り投げた。
すると、浩之が森を抜け出てきた。

『ザップーン』
水に何かが飛び込む音がした。
「はー、はー、どうも、まだ体が本調子とはいえねえなぁ」
まだ息を乱しながら、浩之が銃を構える
「だったら追いかけてこなけりゃいいじゃない!」
「まったく、そのとおりだな。だが、おれはこんなことさっさと終らせて家に帰りたいわけよ
 で、もう一人のほうはどうした?
 さっき、水音がしたみたいだがとびこんだのかよ?
 なかなか、勇気のある奴だな」
真琴は黙って浩之を見つめている。
「おまえはどうするんだよ?
 撃たれて死ぬか、飛び降りて死ぬか。
 どっちかは選ばせてやるよ」
「あんたなんかに撃たれて死んでたまるもんですかっ!」
と言い放ち、パチンコを浩之目掛けて撃ちながら崖を飛び降りた。
『バシッ』
真琴の最後に放ったパチンコ玉は浩之の左眼に命中した。
「てめっ!」
左眼をおさえながら崖下に銃を乱射する。
しかし、大きな水音が響き渡り目標がどこにいるのかすらわからなくなった。
「くそっ!狐の最後っ屁って奴かよ…あれ?狸だったかな?
 まあ、いい。まぶたに当たっただけだしな。
 でもこれじゃ、一時は見えやしねぇ…ついてねえぜっ…」
そういって、その場を離れていく浩之であった。

物陰に隠れた繭はすやすやと眠っていた。

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