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僕たちの失敗 -ハッピィライフ


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  ──拝啓おふくろ様。
  相変わらずヤンキーと行動を共にしている僕という実存でありますが、
  探し人の住井は依然として行方知れずであります……。 夜が、あけた。目覚めはいいのだろうか、悪いのだろうか。それはよくわからない。ただわかることは、陽射しは飽くことなく、地上へと降り注いでいた、という事だけであるというだった。

 大前提として住井護との合流を果たさなければならないのではあるが、実際にこれといった切り札になるような武器も持ち合わせていない以上、無闇に動き回ることは得策とは言えなかった。その点に関して自分たちが現在いる森の中というのは恐ろしく安全であった。ここで一夜を明かした訳だが、何一つとして異状は無かった。
 そう考えてみると、100人もの人間が殺し合っているというのに、ここだけは切り取られて隔離された空間であるかの様な錯覚をおぼえる。

 しかし。

 「途方もない」と言うのはこういうことなのだろうか? 緩やかに八方ふさがりを食らってる気がする。そう思うとこの森自体が天然の監獄に見えてくる。そしてその監獄の中で北川潤(男子029番)はもずくを食べている。ただただもずくを食べている。そしてその隣で宮内レミィ(女子094番)ももずくを食べている。ニコニコしながら食べている。つまり表情に差はあれど、結局二人でもずくを食べている以外にやることはなかったのであった。

 そう。

 俺は、今、ヤンキーと、見知らぬ土地で、もずくを、たべている。

 そう。

 そうやって得体の知れない人間と一緒に珍フードを食べている自分が今ここにいる。そういえば似たような話がどこかであったはずだ。頭の中の記憶を掘り起こしてみると、ふと昔読んだ漫画のことが頭をよぎった。
 タイトルは忘れたが、確か冴えない高校生が突然現れた宇宙人と一緒に、日がな一日豚カツを食らっては血塗れになりながら墓に供え物を供えていた…とかいう話だった。さすがに昔に読んだだけあって細かいことは覚えていないが、ロクな内容でなかったことだけはよく覚えている。
 ふと、そのことを思い出して北川は背筋に冷たい物を感じて身を震わせた。このままもずくで血塗れパーティ。もずくまみれ。もずくで墓穴。ズボンははかない。もずく死。ファッキンもずく。もずく。パンツ。もずく。
 北川は慌てて頭をふって不吉な考えを追いはらった。奴らが食ってたのは豚カツであってもずくじゃない、もずくはもずくで豚カツは豚カツのはずでつまり俺達は血塗れじゃなくて塗れるのはあいつらでパンツをはかないんじゃなくてそれはズボンで────

 そう。

 僕は、今、ヤンキーと、見知らぬ土地で、もずくを、たべている、ます。

 目を閉じる。やさしいギターが流れ始める。もずくで作ったギターからもずくのメロディが静かに流れ始める。それは気持ちのいい音楽。聞こえるはずのない北川の耳にだけ響く新鮮なメロディ。

 あ、あ、あ、やっぱり、まだ、疲れてるな、元々こんな、キャラじゃ、ない、のに、なぁ、俺は

 温かい蒲団。気持ちのいい音楽。ハッピィライフ。

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