休息
先程の死闘から数刻。
あの戦場から三、四百b離れただろうか。
小さな沢を目にした弥生はそのほとりに腰を下ろした。
リュックから水の入ったボトルを引っ張り出し一気に飲んだ後、呼吸を整え
周囲の安全を確認したうえで、携帯食を齧りながら武器の点検に入った。
銃口内の枯葉や土を除き、空うちして引き金の異常が無い事も確かめる。
弾を装填しほっと一息着いた際、澱みに映った自分の顔を見て自嘲気味に笑う。
鮮やかな御髪は乱れ、地面を転がった際の枯葉が所々ささり、
顔の右半分は雪見に一撃を加えた時の返り血で赤く染まっている。
「フフフ…まるで鬼ですね…」
伏せた瞼から涙が溢れ出し、頬を伝った赤い雫が水面に幾つもの波紋を作る。
一分が過ぎた。
“ザブザブザブッ”
おもむろに弥生は沢の冷たい水で勢い良く顔を洗い、タオルで念入りに拭う。
髪の枯葉や埃を払い髪を整え、ボトルに水を補充する。
身体中を点検して何処にも異常の無いのを確かめた後、ハンチング帽をかぶり直し武器を装備した。
「由綺さん…藤井さん…」
後に続く言葉を飲み込み歩き出す。
その顔に先程までの面影は無く、“いつもの“表情に戻っていた。