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手負いの獣


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山を抜け、廃墟と化した町へと進む――
誰も通らない道、そんな場所にある路地裏。
そこへと抜ける道は、人一人通りぬけるのも困難な場所だった。
入り口を少し進んだ場所、そこに赤い血が付着した罠が仕掛けられていた。
手入れされていない雑草に覆われたそれは、普通に歩いていたのではまず気づかれないであろう
巧妙な仕掛け。
さらにその奥……そこに死んだように眠る一人の女、深山雪見(096)。

雪見の左腕には、先ほど殺害した石原麗子の白衣が巻きつけられていた。
白衣が真っ赤に染まっていたが、どれが雪見の流した血なのか麗子の返り血なのかもはや分からなかった。
「……生きてるのね、私。」
やがて、雪見がゆっくりと目を開ける。
「もう私、駄目だって思ってたよ、みさき……」
雪見が空を見上げた。
「みさきが好きだった夕方まで、生きていられるのかな、私。」
疲労と苦痛に苦しめられながらも、親友達への復讐を胸に誓い、ここまでやってきた。
雪見に危害を加えるものは誰も来なかった。幸いだ。
先ほどまでは、戦える状態ではなかったのだから。
たとえ細い路地裏への道を利用して仕掛けた罠にかかった者がいたとしても、
とどめをさせたかどうか…。

雪見が手持ちの武器をもう一度確かめる。
アサルトライフル…残弾はまだ充分にある。
だが、既に左腕は動いてはくれない。片腕でそれを扱えるほど雪見は銃器を使いこなせてはいない。
「かまわないわ。壁や障害物に支えてもらえばまだいける。
もしなければ気力で支えればいい。それに、みさきや澪ちゃんがきっと私を支えてくれる。」
復讐への渇望だけが、今の雪見を突き動かしていた。
すでに引火して、なくなってしまったが、最後のひとつ――ジッポオイル水風船。そしてドラゴン30連花火。
「組み合わせて使えば…と思ったけど、浅知恵だったのかな。」
雪見の腰にはサバイバルナイフ。
「……私には、これが一番ね。」
(これで二人――殺した。もう後戻りはできないのね……)
そして視線の先には、雑草に隠された罠。


私は復讐者。きっとそこまで辿り着いてみせる。
「本当はもっと眠りたい。だけど私は――!」
罠を取り外すと、私は再び戦場へと歩き出す。
失った心――半身を取り戻すために。

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