この孤島、脱出不可能#2


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白い砂浜、青く澄み渡る海。
「この島も、こうしてみれば悪いところでもないんですね。」
楓が、潮風に揺れる髪を押さえてそう呟いた。
「それにしても、島ひとつ…見えません。」
「ねぇねぇ、この辺って一体世界地図でいえばどのくらいなんだろうねぇ。」
玲子が楓の袖を引っ張る。
「どこでしょう?」
楓も控えめに首を傾げた。その仕草が傍目にとても愛らしい。
「SOS信号とか出して気づいてくれるかしら…」
「それ以前に、私達はSOSの仕方を知りません。」
「ま、まあそうなんだけどね、にゃはは。」

あまりに主催者側の手際――そう、あの放送の情報はどこから仕入れているのか――が良すぎる。
どこかに秘密の連絡通路があるのでは……そう玲子が提案した、二人の地下道脱出作戦は失敗に終わった。
入り口といえばマンホール…そんな安易な考えではやはり道は切り開けなかった。
もしかしたらもっと別の入り口があるのかもしれないが。
「船を作る!!……なんて無理だねよねぇ……道具もなければ、ここから一番近い陸地も見えないし。」
「そう悲観することもないです。考えることはものを創ることだから。」
楓は島の内陸部を見つめる。
(耕一さん、千鶴お姉ちゃん、梓お姉ちゃん、初音……)
心配でないわけではなかった。だが、あれだけ歩いても誰にも遭遇することはない。
黒い予感が晴れることはまだなかった。
(今は…私にできることをやるんだ。)
楓の決意は固かった。
「ねぇ、楓ちゃん、そろそろお腹すかない?向こうの岩場で休憩しよ☆」
「はい。」
玲子が二人の残り少ない食料を取り出しながら、笑った。
(みんなで、笑って帰りたいな。)
周りからは見つかりにくい岩場の陰へと移動しながら、そう祈った。

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