白い、決意。2


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……息が、苦しい。
きよみ(白)は、森での全力疾走でかなり疲労していた。
(こんなところで、挫けてる場合じゃない、のに)
膝ががくがくする。呼吸が乱れたまま戻らない。だが、数十分、走り続け
れば誰もがそうなる。
(…早く、早くとめなくては…これ以上誰かが傷つかないように。誰も、
死なないように…!)
だが、体は言うことを聞いてくれない。
こんなところを狙われたら、一溜まりもない。はじめて、きよみは全力で
走ったことを後悔していた。
(あそこ…あの場所で、呼びかける。もしかしたら、いえ、もしかしなくても
主催の意向に反したことだから、それによって…私は、殺されるのでしょう…)
だから。それをやるのは自分独りでいい。
他の誰も、この支給品がなければ出来ない事だから。
これは、宿命なのだ。
(私が、生きた証になりますように…)
息を整えて、きよみはまた走り出した。
前方に、川が見えた。
誰も居ないことを確認して、きよみは川辺に佇む。
水位はそう高くない。橋がなくても歩いて渡れそうだ。
水は清らかにさらさらと流れている。
そういえばもう水はない。急いで、川の水をペットボトルにいれ、ついで
に喉の乾きも癒す。
これから、呼びかけをする。
川に足を忍び入れ、川の中を真っ直ぐ反対の縁に向かって歩きながら、
きよみは思考した。もちろん、人の気配にも細心の注意を向けていた。
…それは、ずっと少しずつ、考えていたことだった。

呼びかけをする。それは危険な賭けだと、思いついた時からわかったいた。
如何に上手く、これをこなせるか否かで、この島にいる哀れな人達を救え
るかどうかがかかっている。
最初は、森の中や、人気のないところで呼びかけをするつもりだった。
でも、これは危険性が高い。
主催側による、腹部に爆弾が仕掛けられているという情報。嘘でない場合
は、新たな猜疑心の種として、生き残される可能性がある。
それは、自分の放送そのものが、主催側に利用されかねない、ということだ。
見知らぬ女性の、殺しあいはやめましょうという、放送。
見せしめに殺されるのであれば、それを考慮して喋ればいい。
だが、殺されなかった場合。
主催側が再度、自分の放送に似た…つまりは偽の放送を行い、人を集める。
そして、そこで殺し合わせる事も可能だ。更に言えば、そこに集まった人達
を一網打尽にしてやろうとする、主催側に協力的な人が出てくる。
…結果大量殺戮が起こるだろう。
姿を隠したままでは、上手くいかない。
だとすれば。
(死をもって、呼びかける…しかない)
自分が見せしめになる為の放送だ。
「死ぬかも知れない」ではなく「死ぬ」ことが確定、もしくは100%に
近い確率であることを、きよみはわかっていた。
ただ、協力しあってください、と言うのではダメだ。
自分が死ぬことを前提に、それに賭けていることをアピールしなくては。
恐ろしい。
(怖い…)
反対側の川縁に着いて、自分が震えていることに、きよみは気付く。
(特攻兵の人達も…こんな気持ちだったのかしら…?)
今、自分は死にに行くのだと、実感しながら、きよみは建物へと向かう。

【きよみ(白)移動中】

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