堕ちた道化
「あの様子だと…。英二さん死んでしまったみたいだな…」
冬弥が由綺に話しかける。
ザッ
崖下。静かに着地。
住井にも聞こえた。信じたくない台詞。
英二、あの男は自分が殺さなければいけなかったのに。
信じられない。
美咲さんのかたきをうつ。
それが唯一無二の望み。
決心したばかり。
そう決心したばかりなのだ。
「嘘だ…」
『?!』
冬弥と由綺が振り向く。
「嘘だ…。嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だーーーーーーーーーーーーーー!!」
早足に冬弥の方に近づいた。
「でたらめ言うんじゃねぇ!!!!」
冬弥の目の前まで…
「死んでもらっちゃ困るんだ! 死んでもらっちゃ!
あいつは俺が殺す!
美咲さんを殺したあいつを!
俺が! 俺が殺すんだ!」
(英二さんが美咲さんを?!
なにを言っているのだろう。こいつは)
冬弥の率直な感想だった。
「くそ! くそ!くそ!くそ! だったら今逃げていった妹の理奈って奴を!!!」
カチャリ
住井は気がついた。
(こいつらさっきの…)
銃口が自分に向いている。
遅すぎた。
「あはは、あはははははは!!」
笑いしか出てこない。
(なんて馬鹿なんだ俺は。これじゃまるっきり…)
「由綺…。俺がやるよ…」
(道化じゃないか…)