わたつみのような強さを
死んだ。
美凪も、みちるも。
道を行く途中流れた放送で、往人は立ち止まった。
守ろうと思っていた二人が。
誰よりも大切にしていた二人が。
死んでしまった。
予感はしていた。
――ありがとう――そんな声が、あの時確かに聞こえていた。
二人の、優しい声。最後に出会うことが出来たのだろうか、彼女達は。
そうであって欲しい、きっと、そうだ。
そう思い込むことにした。そうじゃないと、余りにも悲しすぎるから。
夏の田舎町。
旅の途中で路銀が尽き、必然的に留まることになった、あの町。
夏と海の香りが風に運ばれ、どこまでも澄んだ青が、限り無く遠くまで広がっていた。
交通の便も悪く、閉鎖的で、そこにある空気はまるで、千年も変わらぬものであるように思えた。
廃線となり、人のいなくなった駅で、彼女達と出逢った。
気付いたらいつも三人で、まるでずっと昔から、そうであったかのようだった。
変わらぬ日々が、いつまでも続く、そんな錯覚を覚えていた。
そしてその夢は、呆気無く、どこまでも呆気無く、終わった。
感傷に浸るのはここまでにしよう。
自分には、自分の役目が。
一人また、死んだ。
あんなものは理想論だ、現実は違う、そう思う。
自分に出来ることは、ゲームに乗り無作為に人を殺す者を、殺す。
主催者も、殺す。
それだけだった。
センチメンタルは他の奴に任せればいい。
心に空虚を抱え、道を往く。
それに押しつぶされない強さを。
変わらない、わたつみのような強さを、もう持っていた。