無知の中の死
「この住井護様ともあろうものが…はは」
ガッ!
脳天に衝撃が走る。
冬弥の特殊警棒。
(まぬけだなぁ…)
住井の頭から血が次々と流れ出す。
(いろいろあったな。
美咲さん。綺麗だった。
最初に出会ったときは怯えてたな。
でもすぐに打ち解けて。
彼女はまな板を持ってたんだ…。
違う。ノートPCだったんだ。
従兄弟。潤に渡せばどうにかしてくれる。
俺の携帯と合わせりゃなんとかできるかもしれない。
探して。
緒方英二さんが出てきて。
なんであんな奴さん付けしてんだ! 俺は!
クソ!!
美咲さんを預けちまって。
そうだ。キスされたんだ。
別れてすぐに放送があって。緒方の野郎の嘘がわかって。
変なチビガキにスネ蹴られて。
違う。その前にもう美咲さんを見ていたんだ。
あん時からもう狂ってたのかな? 俺。
あのチビガキに縛られて…。
…………。
そんな趣味ないのに…。
………………。
変な二人組に近づいたら左肩肉吹っ飛ばされて。
美咲さんにナイフを渡されて。
違う! もう死んでいたんだ。
俺がナイフを取っただけだ。
くそ! なんでこんなに間違えるんだ!!)
彼は気づいていない。
最も大きな間違いに。
(美咲さん。
誰かに先を越されたけど、
緒方の野郎は…。
美咲さんのかたきは死んだってさ…)
冬弥は住井の落としたバタフライナイフを拾う。
(ああ、潤のやつにも会いたかったな)
”もずくを食べる時ってなんで猫背になるのかな?”
こんな話題で五時間は論議ができるおもしれー奴だった。
(いい奴だったな)
『ジジ…みんなーお昼の時間だぞー』
住井の胸に…。突き立てられた。
「うっ…みさ…き…さ……」
『以上だ。ペースアップしてきたじゃないか 』
冬弥は初めて人を殺めた。
なのに…。
(放送と同時に死ぬと…。発表されないんだな…)
頭に浮かぶ言葉はあまりにもつまらないものだった。
【住井護 死亡】
【残り59人】
【定時放送と同時】