一つの愛の形
どうして、こんなことになったのだろう。
何がいけなかったのだろう。
隣を歩く佐祐理をじっと見る。
「ふぇ〜、舞、どうしたの〜」
「……なんでもない」
それはいつもと変わらぬ佐祐理で。
でも、佐祐理はもう、壊れていて。
せめて、佐祐理は元の佐祐理に戻って欲しい。
そのためなら、私は……
二人の前に、突如影が躍り出た。
左腕はボロボロで、全身傷だらけで。
瞳だけが、まるで獣のようにギラついていた。
深山雪見――
「……人を探しているわ。
黒髪でおしとやかそうな女の子、大きなリボンをつけた小さくてかわいい子。
この二人を殺した奴を探している。覚えはない?」
静かに、暗い声で問う。
「……知らない」
「佐祐理もですねー」
二人は揃って答えた。
返事を聞いた雪見の表情に、失望の色が宿る。
「そう、なら用はないわ。私の気が変わらないうちに消えなさい」
――よくもまぁ、そんなことが言えるわね、私
もう、ろくに戦えないというのに――
自嘲しながらも、残された右腕はしっかりと、アサルトライフルを構えていた。
「待って、怪我してる……」
「だめですよーっ、舞ーっ」
大怪我を追っている雪見を気づかいかけよろうとした舞を、佐祐理はとめた。
そのまま、雪見に向かって銃を構え、言った。
「あなたも舞を殺そうとするんですねーっ。
あははーっ、そんなこと、この佐祐理が許しませんよーっ」
「!? だめっ、佐祐理っ!!」
舞が叫ぶ。
だが佐祐理は耳を貸さない。
「そう……じゃあ死になさい、あなた」
雪見もアサルトライフルを佐祐理に向け……。
ダンッ!
撃ったのは、佐祐理の方が早かった。
そのまま、舞の体が崩れ落ちた。
これでよかった……。
あの人は……生きてる……。
驚いているみたい……。
「舞っ、舞っ!」
佐祐理の声が、遠くから……。
「……さ、ゆり……。
もう、人……ころさないで……。
……さゆりが、そんなこ、とす、るの……
見たくないから……」
最後に私は笑えただろうか?
佐祐理に笑いかけることができただろうか?
佐祐理……
……佐祐理……
……さ、ゆ……り……
雪見は目の前の光景が理解できなかった。
それは佐祐理も同じだった。
佐祐理の方が遥かに、銃を撃つのが早くて。
もう終わったと、思った。
次の瞬間、舞が佐祐理の手をつかみ、そのまま自分の方に向けた。
それだけだった……。
「舞っ! 舞ぃぃぃ!
どうして、こんなことするの!?
佐祐理は舞のためにやったんですよ?
舞が大好きだから、守りたかったから殺したんですよ!?
どうして、舞っ!
ま……」
物言わぬ舞に抱き着き、喚く佐祐理。
その隙を逃すことなく、雪見は持っていたナイフで、佐祐理の喉を切り裂いた。
佐祐理は、一体どこで道を間違えたのだろうか。
遠い昔に一弥を失い、そして、自分の居場所とも言える舞と出逢って。
その時から、想いは曲がった方向に進んでいたのかもしれない。
今となっては、わからなかった。
舞と佐祐理の関係、最後に舞の言った言葉。
それらは雪見にわかるはずもなく。
血のついたナイフを拭い、佐祐理の手から銃を奪い、放り出したアサルトライフルを持ち直した。
027川澄舞 035倉田佐祐理 死亡
【残り57人】
【佐祐理の銃は雪見が回収】
【舞の武器(あったか?)は放置】