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迷走演舞〜惑い〜


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鬼――女は走っていた。
(梓、楓、初音………耕一さん……)
その鬼は木々の間を風のように。
鬼の力を封じられているとはいえ、元々自分の中の鬼を100%飼いならしているその彼女にとっては
体力を残しつつ駆け抜けることなど造作もないことだった。
(と、いっても……)
この極限状態の思考の中で、精神的な疲れは確実に彼女の体力を削り取っている。
(何故なの?あの男、高槻は――)


――――それでですねぇ〜、やっていただけるんでしたら、せめてあなたの縁者の方々だけでも命を救って差し上げましょう。


妹達――少なくとも初音は――安全な場所にはいなかった。死と隣り合わせの戦場に身を置いているのだ。


――千鶴お姉ちゃん、今の私から逃げて!


今も彼女の耳にあの声が響く。
(初音は……私に牙を向けた。)
いつでも優しかった初音、一体何故こんなことになってしまったのだろう。
それ以前に、何故高槻は初音を……
いつでも、そして誰でも、誰をでも…ここで人を――殺せる。
それは狩猟者でなくても心のどこかで感じている感情。
「……愚問ね……」
現に妹達、そして耕一の名前は放送されてはいないではないか。
それは偶然であれ必然であれ、まぎれもない事実なのだから。

やがて人の気配。意識をそちらに飛ばす。
(これも私の所為ね。)
水瀬秋子の言葉を思い出す。
――縁があれば名雪さんを……ね。

鬼は走る。薄暗い森の中を。
そして――辿り着いた先、二人の女性、そして……
鬼が、いた。

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