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迷走演舞〜慟哭〜


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パッ!!
血飛沫が舞う。横に凪いだそれを千鶴が茫然自失で見つめた。
楓は一瞬で間合いを詰め、千鶴の腕の皮を軽く引き裂いたのだ。
もちろん、楓が故意にはずしたもの。
今の千鶴には楓とまともに闘えるだけの精神的な余裕はない――

我に返った千鶴が叫ぶ。
「や、やめて……私は…楓っ!」
楓の攻撃は続く。よけなくても、かわさなくともそれは致命傷にはならない攻撃の嵐。
だが、その攻撃の意図を千鶴には汲めない。
千鶴はソレを左手でいなす。だが、腕に、体に、少しずつかすり傷が増えていく。
「姉さん……」
楓の目からはとめどなく涙が溢れている。それを拭う手は今はない。
いつしか千鶴も、表情が変わっていく。
「やめて……やめてぇ、楓っ!!!」
その叫びが森の中にこだまする。哀しみの、悲痛の声だった。

――高倉みどり――確かに自分は人を殺した。
それは大事な人を守るためだけの悪魔の契約。
だけど、私は生来の狩猟者。その気になれば誰でも殺せる。
かつての自分がそうであったように。

楓の猛攻は続く。それは傍から――玲子達から――見れば、異種格闘技の上級者たちの試合に
見えたかもしれない。だが、これは死合いだ。
またもJokerが含みをもたす笑みをこぼす。それに玲子は気づくこともなくて。

楓……お願い…お願いよ…
もはや声にならない叫びを意味不明に呟きながら千鶴が尻餅をついた。
「……」
楓が振り上げた爪を千鶴の右手の爪へと振り下ろす――!!

『聞こえますか?島にいる、皆さん、聞こえますか? 』――

そのとき、二人の、いや、四人の耳にそれが響き渡った。

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