迷走演舞〜想〜


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『聞こえますか?島にいる、皆さん、聞こえますか? 』
楓の、そして千鶴の動きが止まる。
それだけの意思を持った、強い声だった。

『私は、きっと、これから死ぬことになるでしょう。それは、主催の意に反する
ことをするからです。よく、聞いてください。これは、私の主催に対する宣戦布
告です!』

一人の顔から笑みが消える。

『あなた達は、何人殺しましたか?何人の友人を肉親を大切な人を、失いました
か?私は一人、大切な友人を、失いました。私は、酷く悲しかった。悲しくて、
辛くて、仕方がなかったのです。
あなた達はどうですか?これだけの人達が、同じ時代の同じ国に住む、普通の
人達が、殺し合いをさせられているのに、自分のことだけを思い、自分の大切
な人だけを守ることしか、できないのでしょうか?
…私は、嫌です。そんなことは死んでも、したくありません。
自分や、大切な人を守るために、誰かの大切な人を殺すだなんて、そんなこと
は出来ません。
もし、私に同意をしてくれるなら、手を取り合って人の皮を被った悪魔
の魔手から、逃げ果せて下さい。方法は、必ずあるはずです』

ギリッ……!
その歯軋りの音はその強き少女の声の中聞こえるはずもなく……

少女の演説はさらに続いた。
『聞こえますか?私は、もう、ダメです。でも、悲しまないで。私は私の誇りに
従って、戦うことが出来たのです。私はこうして、私を守りました。
だから、蝉丸さん、月代ちゃんをみんなを守ってあげてください。
私は、こんなことしかできないけど、でも、蝉丸さんなら、切り抜けられる。そう、
信じてま……』
そして…爆発音。
そして、静寂……

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