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迷走演舞〜疑念〜


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「さあ、気を取り直して行きましょう。」
沈黙を破ったのは南の手を叩く音だった。
「……どこへ……ですか?」
玲子はそう南に聞く。未だにこの現実を直視できないでいた。
「この先の……放送室。前に見つけたのよ。無人だったから、今のももしかしたらって……」

二人を先導し、南が歩く。
(都合が…よすぎます。)
放心したままの楓が、南の後姿を見つめる。それはいつもと変わらない。
(何故だろう…また…胸騒ぎ……)
最後の千鶴の様子はどことなくおかしかった。何か、おびえるようなあの視線。
そして、今の放送と、その場所を確信しているかのような立ち振る舞い……
だが、答えは出ない。それでも自然と、玲子と南の間に体を入れる。
なぜかそうしなければいけないような気がした。
「…ここだと思いますよ。」
その建物の屋上に、黒く何かが爆発したような痕跡。
そして、チラリと見えた赤い何か。
「……」
玲子の顔が青ざめる。
「玲子ちゃんはここで待っていたほうがいいかも知れないわね。」
南がそう呟く。玲子は力なくうなだれるように肯定した。
「楓ちゃんは…来るんでしょうね…」
それが当然と言わんばかりの立ち振る舞い。
「……そうですね。ご一緒します。」
そして、楓も南が来ることを当然のように受け入れ、答えた。

玲子を残し、二人は階段を昇っていく――。
(この人…慣れすぎている…何か…)
ずっと無言の時が続いた。
やがて屋上の扉の前まで来ると、躊躇無くそれを開け放つ南の両の手。

ギ…ィ……

(うっ……)
楓は思わずその状況に顔を背けた。玲子は来なくて良かったのかもしれない。
「杜若……きよみさんね…」
その躯の姿は南の背に隠れた。今、彼女がどんな表情でソレを見ているのか分からない。
「知りあいですか?」
(やっぱりこの人、血をみても平然と……?)
「……いいえ。私、記憶力がいいだけです。スタート時に見覚えがあったから…ね?」
言い聞かせるように南の声。それは優しい響き――

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