受け継がれた誓い


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『…さあ、考えなさい。あなた達が、今するべき事を。本当の敵は誰か。
想い出して下さい』

『最後に!!蝉丸さん!!』

『…私は、こんなことしかできないけど、でも、蝉丸さんなら、
切り抜けられる。そう、 信じてま……』

爆音が響き――そして、永遠に沈黙した。
「(・∀・)せ、蝉丸…、今…の…」
月代が血の気が引いた顔で呟いた。
無意識のうちに腹に手を当てる。

放送が始まった時から立ち止まっていた蝉丸を見上げるが…。
背を向けたままで、表情までは分からない。

「…いくぞ、月代」
「(・∀・)…どこに?」
「今の爆音はこの向こうから聞こえた。そう離れてはいない」
蝉丸は歩き始めた。その足取りに澱みはない。
まだ足の震えが止まらない月代は、
「(・∀・)なんで、なんでそんなに、冷静なのっ? きよみさんが、
きよみさんが…」
蝉丸は応えない。そのまままっすぐに早足で歩き始める。
「(・∀・)ま、待ってよ…」
震える足をしかりつけて、月代は蝉丸の背を追った。

ぽた、ぽた、ぽた…

「え…?」
そして気づく。
蝉丸の後を、月代の足音とは違う小さな音が追いかけていた。
小さな、本当に、小さなそれは――
握りしめられた拳から流れ落ちる、赤い滴がたてる音だった。

「(・∀・)………」
月代はもはや何も言わず、蝉丸と並んで歩き始める。
(…そうだ、きよみさんは命を賭けて、みんなを、蝉丸を信じたんだ。
 私だって蝉丸を信じて…頼ってるだけじゃなくて、助けないと!
 それで、この島からみんなで出るんだ!)

誓いは、受け継がれた。
そして少女はこの時から、ただの元気な少女であることを止めた。


そして二人は、建物にたどりついた。
最早あの後誰かが立ち入った後であるらしい。幾人かの真新しい足跡が残っていた。
階段を昇ったところの、屋上の扉は開け放たれていて、そこには――

月代の動きが止まる。呼気が乱れる。
「………!」
だが決して、取り乱しはしなかった。
そして『彼女』に祈るために、目を閉じた。

蝉丸は、ただそれだけは奇跡のように残っていたきよみの顔に近づき、
手を当てる。
彼女の顔は、自らの血にまみれ汚れていたが――それでもなお、美しかった。
それは神が彼女の勇気に対して与えた、せめてもの慈悲だったのかもしれない。

(きよみ…)
後悔も、怒りも、悲しみも、憎しみも。全てが蝉丸の中にあった。
だが…それに溺れるわけにはいかない。
きよみは、あの時従容と死を受け入れようとした時と同じように、
いや、あの時以上に己の優しさと誇りを貫いて…逝ったのだから。

ならば自分は、応えなくてはならない。
きよみの信頼と遺志を裏切るわけにはいかない。
(きよみ。これから俺は、お国や、他の誰のためでもなく、
 お前の為に戦う。お前のその優しさのためにこの命を賭けよう)

そして、蝉丸はきよみの遺髪を切り取り、懐に収めた。

(たとえ…死出の道は別々のものであろうとも)
(おまえの想いは、常に俺と共にある)
(しかと見ていてくれ…きよみ)

残る遺志を奮い起こして立ち上がる。
探さねばならない。きよみの遺志を受け取ったものたちを。
振り返り、歩き出す。
「いくぞ、月代。急いで仲間になる者を、そして本当の敵を探しださねばならない
 …ついてきてくれ!」
「…(・∀・)うんっ!」

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