ReStart
「んー、もう大丈夫やな。」
立ち上がる智子。
撃たれた方の腕を激しく動かさなければ、我慢できない痛みではない。
「せや、マルチ、頼みがある。」
「なんでしょうかー。」
「あんたの持っとる拳銃、あかりに渡してくれんか?」
「いいですよ。でも、どうしてですか?」
「あんたには、コレを使こおて欲しいんや。」
そう言って。自動小銃(64式)を見せる。
「…さすがにコレはもう撃てん。せやから、あんたに使こて欲しい。」
「…はい、分かりました。大切に使います。」
それから、と智子は問う。
「どうやった?例のサルベージいうんは。」
「はい。サテライトは使われていないようですが、本体内に蓄積されていた情報の方は。
武器・弾薬・爆発物のデータ、電気、電子、通信関連のデータ。
それから車の運転技能、そして薬草・野鳥に関するデータ。
サバゲーのルール等のデータ。船戸与一の著書のデータ。そして『バトルロワイアル』のデータ。
ただ、これについてはコミックス3巻分のデータしかなかったですー。」
…あまり関係無いものもあるような…
「そーか。ただ、どうなんや。あんたの鳥頭で、そんなぎょーさん覚えられるんか?」
あうー、と言う感じで頭を垂れる。
「その分、優先順位の低いデータを消去しますから大丈夫ですよー。」
「そか。がんばって覚えなあかんで。あんたの友達の残してくれた、大切なデータやからな。」
…友達の残してくれた、大切なデータ。
その言葉に、ついと真剣な眼差しを智子に向ける
「はいっ!」
「じゃあ、マルチ。あんたにもう一つ頼みがある。」
外に止めてあるジープ。それを窓から見つめる。
「車に積んである無線使こて、情報を集めて欲しいんや。」
「はい。具体的にはどんな?」
「もちろん晴香のこと。それから高槻の動向。そして…藤田君が、今、何処におるか。」
…その言葉に、休んでいたあかりが振り返る。
そのあかりに向けて言う。
「…そろそろ、その件にも決着をつけんとあかんやろ。もう半分近お死んどる。
ぐずぐずしとったら、藤田君が、それか私達が殺られることになる。」
「…うん。」
あかりの返事にうなずき返しながら、付け加えた。
「それとマルチ。もう一人探して欲しい人がおる。」
「どなたですか?」
「天沢郁未…晴香の、親友や…」