UNREAL
私にとっての友達とは、出会った時からなんとなく脳内にビビッっと電波が走るっていうかー。
ん、まあ、それも私の思い込みなんだけどね。
こういう世界に身を置いてると、なんかドラマティックな展開にあこがれちゃうから、特に私みたいなコは。
でも、そういうことってすごく大事だって思ってるんだ。
本当は早く帰りたかった。
だけど、そこは絶海の孤島。ただ思うだけでは帰れるはずがなくて。
だから脱出口を探そうって切り出した。元々黙ってるのって性に合わないから。
それは空元気だったのかもしれないけど。
――だったら、一緒にココを出ようね。約束だよ☆――
この島で出会った大切なお友達。
いきなりこんなところに連れて来られて、『殺し合い』。
訳わかんなくなる。
だから、目の前にある現実だけを信じた。それがこのコ、柏木楓ちゃん。
割とおとなしいコだけど、いつの間にか打ち解けていた。
私の強い押しのせいかな?こんなときだけは私の生来の明るい性格に感謝する。
そして、約束したんだ。一緒に帰ろう…って。
ただの口約束だったけど、私は信じてた。
これで一緒に帰れるんだって…帰ったら電話で今日のこと、そしてこれからのことを笑って。
そして一緒にこみパで騒いで。
――来ないで…千鶴姉さん。また……人を狩るの?……昔みたいに――
あのコの声が耳の奥で響く。
あのコのお姉さん、たしか千鶴って呼んでた。
あのコがいつも心で無事を祈っていた、女の人。
だけど、あのコのお姉さんが、あのコが渇望して止まなかったはずの感動の再会は無かった。
爪、血、涙。ただそんな光景が目の前に広がって。
昔こんなお話を本で書いたことがある。たしか大事な人を泣く泣く傷つけるってお話。
ずいぶん前の話だから結構忘れちゃってるけど。
男同士が、ひょんな事から互いを庇い合い、憎しみ合い、殺し合う。
それは愛する女性の為、そして友情の為。
それは本の中で、架空の世界だからこそできた綺麗事の夢物語。
目の前での二人、それは架空の綺麗事なんかじゃなくて。
見ていてつらく――哀しい。
私を守ってくれるような騎士様なんかじゃない。
そして放送があった。凛とした透き通る声の女性。
独白、そして爆発――
私はたぶん死ぬまでこのときの爆発を忘れない。
そのコの最期と見られる建物の側で、私は泣いた。
黒こげた建物の屋上と、こびりついた大量の血の痕…
私はやっと理解した。
私がここに来てから感じていたアンリアルは、全部嘘だったという事に。
今は、楓ちゃんが怖い。途中から一緒に行動していた南さんが怖い。
そして千堂クンが、この島にいるみんなが……怖い。
いつかわたしもこの島に住みついた狂気に飲まれてしまいそうだったから。
本当は、それでも信じなきゃいけなかったのかもしれないね。
この島で、本当に出会えて良かったと思える柏木 楓ちゃんを。