決意
「……と、言うわけ。僕が叔父さんの言葉に何か引っかかるものを感じていれば、
誰も死なずに、誰も悲しまずに済んだんだ。だから……僕が悪い。僕を憎んでくれていいよ」
決して、視線を落とさずに。
祐介は言った。
非は、自分にあるのだと。
「おい」
祐一が、祐介の肩に手を乗せる。
祐介が顔を上げ、祐一の方を見遣るよりも、早く、
祐一は祐介を、殴り飛ばしていた。
「が……ッ」
ぼたぼたと血を吐きながら、祐介はむせ返る。
四つん這いになった態勢から、顔だけ起こすと、その眼前には祐一が居た。
「…お前な」
なんだい?と祐介は訊こうとしたが、それより早く祐一が口を開いた。
「お前な、何が「僕が悪い」だ?
お前一人で何とかなるような話じゃなかったんだよ、もともと。
自惚れるのもいい加減にしろ!
それにな、お前が自分で悪いと思ってるなら、そうやって責任を放棄するような真似すんじゃねえ!
責任感じてるんなら、逃げてねえで、憎まれようが殺されかけようがちゃんと責任とれ!」
一気に捲し立てた後、暫し息を荒げる祐一。
その祐一の姿を唖然と見ていた祐介だったが、
「…ぷっ」
気づいたときには、何故か笑っていた。
「…ったく、恥ずかしいこと言わせやがって」
祐一は、照れたように空を見上げた。
こんな場所でも、空は、青い。
「相沢さんも…人を、探しているんですね」
「ああ……ホントはもう会ったんだけどな、逃げられちまった」
ハハッ、と祐一は笑う。
美汐もそんな祐一に微笑みかけ、
「頑張ってください……私や、長瀬さんみたいに悲しむ人はこれ以上必要ありません」
と優しく語り掛けた。
「おう、任せとけ」
そう言って祐一はいちいち力こぶを作って見せる。
その動作もまたいちいちわざとらしくて、3人の間に自然と笑みがこぼれる。
「よし…行くか!おい長瀬、天野を死なせんじゃねーぞ。俺が真琴に怒られちまう」
祐一のその台詞は、目的を果たした後なら死んでも構わない、と言う覚悟の表れだろうか。
「お気をつけて」
祐一は手を振りながら、森の奥へとやがて消えていった。
ふぅ、と二人同時に溜息をつく。
やがて、よし、と気合を入れると、
「さぁ……行こう」
「ええ」
二人は歩き出す。
僕が僕の責任を果たすために。
管理者を倒す。
高槻を倒す。
…そして、叔父さんも。
どこまでやれるかは分からない。
だけど、天野さんだけは絶対に守って見せる。
空を見上げた祐介の目には、これまで無かった決意の色が表れていた。