感染報告
黒服が進み出る。少し厚めのレポートを渡された高槻は、ちょっと意外そうな
顔をしてみる。
「ここんとこ、なんか大きな動きあったかあ?…ってお前は?」
椅子にだらしなく腰掛けて、くるくる回す音がきいきいと耳障りだ。
黒服は肩をすくめて言葉を濁す。
「例の、爆弾を仕掛けなかった二人、と申しますか二体の件なのですが…」
ぴたり、と回転を止めて不快そうに顔をしかめる高槻。
「あー、お前は来栖川重工の?アレか?
ありゃあ上手く行かないもんだなあ、ポンコツのほうは日常データが多すぎて
挟み込めなかったし、マトモなほうはさっさと壊されちまったしなあ」
最後は再びくるくると回転しながらおどけてみせる。
高槻の仕事振りは、やたら手回しはするくせにあまり熱心ではないというか、
手慰み同然のいい加減ささえ感じさせる。
「いえ…その日常データを切り捨てて例のウイルスを取り込んだようなのです。
勿論発症するかどうかはデータ不足なのではっきりと断言出来ないのですが」
またもや回転を止める。
「ほ?ほおー…そりゃあ、また…」
上機嫌そうに気取って立ち上がる。
くるりと一回転。
「自殺行為、いや、他殺行為になるかな、そりゃあ?」
はっはっはと高笑いし手を打ち鳴らす。
いいぞ、いいぞう、と喚き散らす。
思わぬ展開に高槻は絶好調だった。