relay
あれから、しばらく。
江藤結花・来栖川芹香・スフィーの間には、何とも言えない重い空気が流れていた。
この島に来てからまだ人が死ぬ場面を見てこなかった3人にとって、長谷部彩の死は
苦楽を共にしてきた仲間の死という事実以上に、受け入れがたい現実として3人の胸に
深く刻み込まれていた。
うつろに歩く3人の進む道、その道の脇に、一人の少女は息絶えていた。
もう何度も見た光景。
これまでなら無視して通り過ぎるのだが、その少女の横顔を見た結花が、
「あっ、この人…」
ゆっくりと歩み寄り、顔をのぞき込む。
「やっぱり…、そうだ」
静かにつぶやく。
「昨日の夜中、私を斬りつけようとした人」
深山雪見の事だった。ただ、結花も他の2人もその名前は知らない。
結花は、昨日の出来事を思い出していた。
あの時は、切羽詰まった表情で、私にサバイバルナイフを向けていた少女。
でも今の表情は、どことなく穏やかで、落ち着いた感じ。
そこに、少しだけ救いを見た気がした。
「この子も、誰かに殺されたんだ…」
「………」
「もう、私たちには止められないのかな。このゲーム」
「そんなことないよ」とスフィー。
「私、許さない。このゲームを動かしている人も、それに乗って人殺しをしている人も。
だから、早く結界を解こうよ」
「うん」
「………」
すぐ近くに生えていた花を2,3本ちぎり、そばに手向ける。
脇に落ちていたライフルと、荷物を手に取った。
「誰が殺したか解らないけど、この仇は私たちが取ってあげる。きっとね」
「………」
「そうだね。ゲームを早く終わらせよう」
3人はゆっくり立ち上がり、決意も新たに歩き出した。