最後の言葉
「おおおおおお!」
号泣が、聞こえる。
七瀬は痛む腰を抑え、のろのろと散弾銃を拾った。
このゲームの現実を今になって体感した。
振り向けば。浩平が地を叩いている。
涙を流していた。
号泣が、聞こえる。
その奥に黒いコートの男と、長森瑞佳が…倒れていた。
視界が暗転する。ぎりりと奥歯をかみ締める。
涙が溢れていた。
号泣が、聞こえる。
二人の目が合う。
七瀬は膝の痙攣を無視して大股に浩平に歩み寄り、引き摺り上げる。
そして胸倉を掴み叫んだ。
七瀬は知らないが、ちょうど浩平がコートの男にしたように。
「何やってんのよ、このバカッ!!」
「ななせぇ…ながもりが、長森が…俺を、俺をかばって…!」
「うるさいッ!泣くな!聞きたくない!」
手を離し、浩平をひっぱたく七瀬。
その七瀬も、ぐしゃぐしゃに泣いていた。
「バカッ!バカッ!」
何度も何度も、ひっぱたいた。
やがて浩平は膝をつき、七瀬に抱きついて、泣いた。
七瀬も浩平の顔を抱いて、泣いた。
号泣が、聞こえる。
「こう、へい…?」
2人はぴたりと泣き止む。
「長森!?」
「瑞佳!?」
微かな希望に駆け寄るが…同時に歩みを止める。
血を吐いていた。目に光がない。
これは助からない、そう思った。
「こう、へい?」
「お、おう」
「いつも、いつも、ありがと…ね
待っててくれたとき、うれし、かった…よ」」
「なんだよ、それ」
「もう、駄目、みたい、だから…さ」
「何言ってるんだよ、ばか
お前がいなくなったら、毎日遅刻しちまうじゃねえか」
「だいじょぶ、だよ
ななせさん、が、いる…もん」
七瀬が息を飲む。
「ね…?だいじょぶ、だよ、ね?」
「瑞佳が大丈夫なら、大丈夫、だよ…」
「そうだぞ、コイツには無理に決まってるだろ、このばか」
「ええ、ずるいよ、そん、なの」
ごぽ、と音を立てて血を吐く。
「長森!」
「瑞佳!」
呼吸が浅くなっていく。
「ね、こうへい?」
「お、おう」
血が、止まらない。
「大好き、だよ?」
「おう、おう」
そして、最後に。
「-----ぎゅって、して…」
【093巳間良祐死亡】
【065長森瑞佳死亡】