形而下の戦い〜間奏〜


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「……はあ」

詩子はぽつんと一人で佇んでいた。
空っぽの鞄を置いて、少年は行ってしまった。
少年に置いて行かれて、もう結構な時間が経った。

追いかけていきたかった。でもそうしたらきっと彼に迷惑が掛かる。
もしも彼が戦っていて、そこに私が出くわして、
それで気が散って殺されちゃったりしたら……。

うう、そんなの嫌だよ……。

でも、もしかしたら少年が戻ってくるかもしれない。
だったらむやみに動かない方がきっといい。
でも、まだ彼は戻ってこない……。

そんなことを考えていたら、逃げることも進むことも出来ず、
結局ここでボーっとしてるはめになった。

目の前には森があった。
出口は……見えない。そう易々とは入れるほど浅い森じゃない。
どうしよう……、どうしよう……。
入っていきたいようなそうでないような……、ううー。

詩子の密やかな葛藤は続く。

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