×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

接触


[Return Index]

「もう…限界ね……」
それがそこでの最後の言葉。軽く、かすかに響いた声。
目の前の少女――リアン(100)の体はもう限界に近づいていた。
もう、これ以上仲間を待っているわけにもいかなかった。

舞の、佐祐理の死を告げた放送。
そしてそのやり場の無い怒り、憎しみをぶつけるべき相手、南ももういない。
このまますべて忘れてしまえば…狂ってしまえればどんなに楽だっただろう。
だが、目の前の苦しんでいる少女が、それを許してはくれなかった。
(この子も…戦ってるんだ…私が逃げるわけにいかないじゃない!)
自分だけここでこの少女の死を黙って見守っているわけにはいかない。
(ごめんね、姉さん、スフィー、私は…独自の判断で行動するわ)

この島は割となんでも揃っていた。
住宅街や店もあった。
(きっと…この子の症状を押さえる薬とか…あるかもしれないし…)
医学の知識は無い。下手をすれば少女の死を早めてしまう結果だってありうる。
だが、何もしないで隠れていることよりずっとマシだと思えた。
たとえその先に最悪の事態が待ち受けていようとも。

洞穴を飛び出す。
待ち合わせの小屋にスフィーや芹香の姿がないかと淡い希望を抱くもそれは果たされなかった。
(本当にごめん……)
リアンを抱え、凄惨な戦いが行われている世界へと飛び出す。
結界のこと、脱出のこと、本当の敵のこと…
そんなことより目先の少女の命――
リアンを助けるために動くのは今しかないのだから。
来栖川綾香(036)の行動原理は実にシンプルだった。

(毒…蛇に噛まれたときの消毒剤…なんかじゃダメよね…さて、どうすべきかしら?)
考えながら綾香は急ぐ。もちろんリアンの状態、周りの状況に気を配りながら。
気がつくと、どこからか小川のせせらぎ。
その音にまぎれ、騒がしい声が聞こえてきた。

綾香は出来る限り気配を殺しながらその声の主を伺う。
十五b近い崖の下、緩やかな流れの川のほとりにその男はいた。
エクストリームの試合でも滅多にお目にかかれないほどの凄み。
(なんて威圧感…!)
綾香の額から汗が流れ、落ちる。
あの男はやばい――綾香の直感がそう危険信号を発していた。
(ここから離れなきゃ――)
だが、綾香の体はその威圧感で金縛りにあったかのように動いてはくれなかった。

「なんて激流だ…これに巻き込まれたらいかな俺様でも生きて帰れねぇぜ…」
「ぴっこり」
「だが…サバイバルに難関は付きものだ、今晩のメシは魚にするぜぇ…なあ相棒」
「にゃう♪」
その男、低くドスの聞いた声は綾香の体を否が応にも震え上がらせる。
「……分かってんだろ?俺が水が苦手だってこと。だからよ…」
「ぴっこり」
「おめぇ…捕まえてこいや」
「ぴっ、ぴこっ!?」
その男はなにか喋る毛玉を引っつかむと、上流へと放り投げる。
「ぴ、ぴこぴこっ!?ぴこ〜〜〜〜〜〜………」
遥か上流へ消えて行く毛玉を見て騒ぐ猫。
「にゃう♪にゃう♪」
「なに踊ってんだ…おめぇ猫だろ?おめぇもだ……よ!!」
「にゃにゃっ!?にゃ〜〜〜〜う〜〜〜〜………」
(なんて非道な奴……!)
綾香はその男に激しく嫌悪感を覚えた。
「ったくよ…使えねぇ奴等だぜ…これならまだうぐぅうぐぅ言ってたガキの方が…」
そこで男の声が止む。
「今…俺はなんて言った…?あのガキのほうがいいだと!?」
男はその場で崩れ落ちるかのように――
「この残酷無比な俺が…まさか…そんなことあっていいはずがねぇ……!!」
(あの男もまた…この島の被害者なのかもしれないわね……)
凄みをもつ目の前の男も、この異常な島に精神を侵された哀れな犠牲者なのかもしれない。

綾香の気が少しだけ緩んだ…その瞬間だった。
「誰だ!?」
男の声。
(しまった!まさか感づかれるなんてっ!?)
綾香の表情に怯えの色が走る――!
「そこで盗み聞きしてる奴ぁ!」
同時に綾香に対し銃口が向けられる。
(銃――――!?)
戦慄が走り抜ける。
だが、綾香の格闘の経験が無意識の内に体を動かす――!
手近にあったもの…リアンの体に触れたとき同時にたぐりよせた飛び道具になりえるもの――
「でやぁっ!」
それはリアンの持っていたバインダーだった。
「……!」
同時にリアンを抱え、脱兎のごとくその場から離れる綾香。
「ちいっ!」
男が一瞬ひるんだ隙に――まさしく刹那の出来事だった。
「あの女…素人じゃねぇな…気配の殺し方といい…やるじゃねぇか…」
男はその落ちてきたバインダーを拾う。
「なんだ?このカードの女は。
 …まあいい、盾ぐらいにはなるかもしれねぇ、もらっておくか」

「ハアハア……あんな男がいるなんて……やはりこの島は危険すぎるわ…
 早くリアンを助けないと大変なことに――!」
あの男の目は、何人も殺してきた――そんな目をした男だった。


「ようやく戻ってきたか…こら、水をかけるんじゃねぇ!死んだらどうするんだ!?」
「ぴこっ!!(怒)」
「な〜う〜(怒)」
「分かった分かった…おめぇらにも魚やるから水はやめれ…」
「ぴこっ♪」
「にゃうにゃう♪」
「がああ、落ち着いて食え!じゃれてんじゃねぇ、おろすぞ!!」


リアン【桜井あさひトレーティングカード全108種(バインダー付き)紛失】
御堂 【桜井あさひトレーティングカード全108種(バインダー付き)回収】

[←Before Page] [Next Page→]