そうだ学校へ行こう!
ごとん。
箪笥を寝室の扉に押し付けてカモフラージュする。
「ちゃんと寝てんのよー喧嘩しちゃダメよー」
「行ってくるねー」
晴香、由依と別れてまもなく耕一、浩平の症状は更に悪化した。
男二人は反対したが寝ていて治るようなものでもないと考えた七瀬と初音は
薬品調達に出かけることを押し切ったのである。
消毒薬、包帯は発見できたのだが内服薬が-----必要なのは解熱剤、可能なら
抗生剤も欲しいのだが-----発見できなかった。
屋内で発見した詳細な地図を見ながら病院、診療所を探すが見当たらない。
なんて不便な島なんだろう、と思いつつ仕方なく遠くを探そうとしたとき。
近場に-----学校を発見した。そうだ保健室が、あるじゃない?
先行者の武器を残し、初音は浩平の銃、七瀬は鉄パイプと散弾銃を持つ。
もはや太陽はほとんど沈もうとしていた。
それが最後に見る太陽になるかもしれないけれど。
それでも、構わない。
そうだ学校へ行こう!
真っ赤な空に奇妙なシルエットが三つ。
二人のメイドさんとチビッコが一人。
助さん角さん宜しくメイドさんを両脇に従えたチビッコ-----あゆが叫ぶ。
「はやくはやくっ!」
一人だけ小走りなのだがメイドさんたちは早歩き。
例によって家屋に侵入し今度は晩御飯を頂こうと思った三人。
「たいやきだよっ!」
転がり込むように二人の間に、いや事実転がりながら鉄板を手にした
あゆが雪崩れこむ。たいやき用鉄板。何故こんなものが?
まあ携帯にも便利だし、朝ぐらいまでは保つだろうとアンコを練って
鼻歌交じりに火を起こす梓が表情を曇らせる。
火が、つかない。
妙な事に-----ここいら一帯の家屋はガスが設置されてなかったのだ。
電気すら通っていない。
「? どーいうことかな? この家変じゃない?」
残念そうに卵をお手玉しながら梓が疑問を口にする。
「生活臭、しないものね…」
多分ダミーというか、ゲームのために設置されているので全ての家が
まともに機能してるわけではないのだろう、と相変わらずお手伝いすら
拒否されて小さくなってた千鶴が答える。
うまい具合に食材はある、しかしガスが無ければ熱量が足りない。
たいやきなんて、絶対無理。
「うぐぅ」
あゆがうなだれる。
憐れに思った梓がふと目をやると、電気の付いた教室が視界に入った。
「…教室?」
「あら本当。電気通ってるのね」
「家庭科室か理科室があれば…」
そうだ学校へ行こう!