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形而下の戦い〜秘密兵器〜


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少年は”本”を翳して見せた。
「何度も言うが、これはこれのみではその真価を発揮し得ない。
 だからこれを武器と呼ぶのは間違っているのかも知れないな」

本のページをペラペラとめくってみせる。
そして、ふと思い立ったようにその一枚を外してみせる。

ピッ、という音がする。
本のページを破いたにしては、やや歯切れ良すぎる、硬質的な音だった。

「……だが、この一枚で、その効果自体は十分発揮される」
そういうと少年は、まるでトランプ投げでもあるかのように鮮やかにそれを投げて見せた。
すると事もあろうに、そのページの切れ端はひどく鋭い動きで飛び、
葉子の足元に”突き刺さった”。

「!? ……これは」

驚愕に葉子は顔を歪めた。
それを見た少年は軽く笑った。

「驚いたかい? 不思議そうな顔してるねぇ。
 どうしてただの紙がこんな動きをして、なおかつ地面に突き刺さったのか?
 ってところかい」

葉子はコクリ、と一回頷きを見せた。

「答えは簡単さ。これは”紙”じゃない」

少年は葉子の足元に突き刺さったそれを拾い上げた。
ペラペラと指と指の間で撓らせてみたりする。
その動きは、確かに紙の織り成すものではなかった。
少年はその表面を指で弾いてみる。
だがそこから返ってくる音は、とても予想外なものだった。

カイィンン……。

あからさまな金属音と呼ぶにふさわしい音が、葉子の耳に、そしてずいぶんと
静かになったそこら一体に響く。

「硬質音……」

葉子は不可解な顔をしている。

「ま、紙と似たようなものではあるんだけど……。
 実際に見てもらったほうが早いね」

少年は葉子に何かを放った。
葉子は条件反射でそれを受け取った。
彼女が手にしたものは、鈍く黒光りする物体……、
……拳銃だった。

「……どういうことです?」

「簡単なことさ、それには一発だけ銃弾が入っている。
 それを僕に向けて撃ってもらいたい」

少年が言った言葉も、あまりにも意外すぎる内容だった。

「……何を言ってるんですか?」

葉子は少し不快な表情でそう言った。

「言葉どおりさ。別に自殺願望があるのでもなければ、君を馬鹿にしているわけでもない。
 まあ、気軽に一発撃ってみてはくれないか?」

気軽に……。
なんとも末恐ろしいことを口走る少年だ、と葉子は思った。
そもそもそんなことが出来るはずが無い。
人を殺すためだけに作られたような道具を、事もあろうに気軽に撃てなどと……。

「撃たないの? いや、まさか……」

少年の笑顔が一瞬途切れる。

「撃てないのか?」

少年はそう呟いた。そして次の瞬間、

「…………!?」

葉子の視界から消えた。

「な……」

音も無く、葉子を風がすり抜ける。
驚愕する葉子、そして自分の体の無事を確かめてみた。
――袖口がばっさりと切れている。

「生憎だが、そう悠長にしているわけにもいかなくなったな」

葉子は焦って後ろを振り向いた。
するとさっきまで前にいたはずの少年が、そこに佇んでいた。

「撃たなければ殺す。
 そう言ったら君はどうするの?」

にこっ、と少年は笑った。

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