続きは後ほど。
同じ頃――闇、影、黒い者がすべてを支配する時。
少女達が古びた学校とおぼしき建物の中で、葛藤をしている頃。
七瀬彰は目を覚ました。辺りは闇――充分に、真っ暗だった。
目をこすり、手元の水をごくごくと飲み干した。目は覚めた。
初音は、それに他の皆は無事だろうか?
願わくば、自分が行動を終える前までに、誰も死なないでいる事を。
成功する確率など――すべてをぶち壊しに出来る確率などゼロに等しい。
だが、それでも、自分が死ぬまでは殺し合いをするな。
願いながら、彰は門番を眺めた。マシンガンを小脇に、欠伸をしている。
ゆっくり休んだ自分と違い、彼らは休む事が出来ない。
ふと、長瀬祐介の事を、そして、七瀬留美の事を思った。
従兄弟の祐介。大きくなってからあまり面識はないが、子供の頃は仲も良かった。
自分を慕ってくれた彼もまだ無事だ。
そして、七瀬留美。たぶん自分たちとは関係ないと思うのだが、何故こんなに気にかかるのだろう。
確か彼女は折原浩平という少年と共に行動していたはずで、そして初音はその少年とともにいる筈。
それが、七瀬という少女と初音に、不思議な接点があるかのように思えてならない。
もっというなら、七瀬と云う名と、初音に。
「――考え過ぎか」と、彰は苦笑した。
それにしても、結局自分はこの建物に照準を定めて構わないのだろうか。
高槻がずっとここにいるという確率は限りなく低い。こんな危険な場所にいるわけがない。
――だが、だからといって何処にいられるというのだろう。
他にめぼしい建物などなかった。古い、学校だったと思われる建物はあったが、
あの狡猾な男が、あんな危険な場所に身を置くわけがない。
だが、じゃあ、結局どうすれば良いというのだ。何処にいるというのだ。
行き詰まって、彰は真っ暗な空を眺めた――
確信を覚えたのは、その瞬間だった。
そうだ。
――爆弾だ。
爆弾を爆発させる仕事は、多分高槻の仕事だ。
そう、自分たちに殺し合いをさせなければいけない以上、爆弾をむやみに使う事は許されない。
言うまでもなく、高槻以外の、高槻以下の人間が爆弾をみだりに使って良いはずがない。
だから、爆弾を操作するのは高槻の仕事だ。
だが、爆弾を操作するなど、何処だって出来るわけではない。
たぶん、体内爆弾を爆発させるコードを入力しなければならないだろう事は判る。
まず、その装置が必要だ。だが、それは何処にだって置けるだろう。
だが――入力したものを、体内爆弾に転送するのは何だ?
決まっている。――電波だ。
そう、だから高槻はここにいなければならない。
その建物の屋上――大きな、大きな、その装置を見つけて、彰は確信した。
絶対にいるとは確信できない、だが、高い可能性を確信した。
それに高槻がいなくとも、少なくとも、通信機はある。
彰はごくりと唾を飲んだ。
生きて帰れるかは判らない。たぶん死ぬだろう。
だが、これ以上死なせないために。初音ちゃんや冬弥、友人達を護るために。
その為に、自分は行かなければならない。そういう星の下に生まれついたのならば――。
それは、――勇気だった。歯を食いしばれ。それからだ!
そして、一つ思いついた事があった。爆弾が電波によって操作されているのなら――
そして、爆弾というものの特質を考えるならば――