廃棄処分
潜水艦コクピットに無線連絡が入る。
上空。長瀬一族から。
『オリジナル』高槻は、回線を開いた。
彼にとって、悪夢の通達であることも知らずに。
「はいはい、こちら高槻」
「あぁ、高槻か。
君はさっきの放送でまた、無駄な介入をしたね?」
「あれですか?
だってあぁでもしないと、あのお人好し連中動かないでしょう?
結託して脱出試みらるのもマズいですし、現にさっきも襲撃が……」
「高槻、君は前の通告を覚えているかね。
我々は『いかなることがあろうとも』無駄な介入を避けるように言った。
我々の命令がきけんのなら、君はもう必要ない。
ゲームに加わりたまえ、新たな参加者として、ね」
「……は?」
「君はいらない。そういうことだよ。
今となっては言ってしまうが、参加者に脱出されようが、それは一向に構わないのだよ。
その結末だって賭けの対象の一つなのだ。
我々の権力を持ってすれば、『脱出後に口を封じる』ことも容易なのだから。
それを君は、自己の保身や思考で動き過ぎた。
駒としての立場を忘れてね。
そんな君は、もういらないんだよ」
「……なっ!
俺は今までFARGO代表として数々のゲームの管理者をやってきたじゃないか!
貴様ら、今さらそんな俺を捨てるのか!?」
「言っただろう。使えない駒はいらない。
それに、劣化しすぎたコピーにも限界が来ているようだしね。
君は自分が『オリジナル』だと信じていたようだが、君だってクローンなのだよ。
本物の高槻は、数回前のゲームで参加者に殺されている。
あの頃は本当に使える男だったのだが、残念だ」
「……そんな……馬鹿な……。
認めないぞっ、貴様ぁ! 俺が本物だっ!」
「それは君の妄想だ。わかったら出て行きたまえ」
コクピットのドアが開く。
そこには銃を持った『一流の傭兵』が並んでいた。
「今、ここで死ぬか?
それともゲームの参加者として生き残るか?
他の二体の『高槻』は既に野に放たれた。
自分が連中と違うことを証明したければ、ここで死ぬのも悪くない」
「………っ!!」
高槻は、
プライドよりも、
僅かに残されている生きる可能性を選んだ。
ミナゴロシにして、生き残る。
「ゲーム参加者の諸君。我々はこのゲームの主催者だ。
あの高槻という使えない男は処分した。
今の君たちと同じく『ゲームの参加者の一員』となっている。
爆弾の設定は解除した。
今後我々は、君たちは『殺しあいをする』という前提を守る限り、一切の手出しをしないことを約束する。
脱出の可能性もないことはないが、それを試みた場合は容赦なく戦うのでそのつもりで。
それでは終盤だ。
我々を、タノシマセテクレタマエ――」