高槻'S、……北へ
「はぁはぁはぁ……」
──自分はこんなにも体力がなかっただろうか?
それとも、この島の気候ゆえだろうか?──
高槻06はそう自問しながらここまで歩いてきた。
──くそう、この俺をコケにしやがって。だが、俺をそのまま
殺さなかったことを後悔させてやる。あそこにまでたどり着ければ、
アレがある。何かあったときの為にと用意してあったアレがな。
アレさえあれば何とかなる。だから、なんとしてもそこまでたどり
着かなければならない──
高槻は島の最北端にある、それに向けて歩いてきた。
そしてそれは、他の高槻01と02も一緒だった。
奇妙なシンクロにシティーとでも言おうか。
高槻06がそこにたどり着いたとき、自分が道具だと思っていた、
他の二人の高槻もそこにたどり着いていたのだった。
『『『おまえらもか!!』』』
3人が同時に口を開く。
個体毎に多少の劣化があろうと、やはり同じ人間同士である。
『『『ここの施設は俺が使う。お前らは別へ行け!!』』』
同じ言葉を3人が3人とも口にするのはある種滑稽でもあった。
しかし、当の高槻達は真剣である。
──まてよ、このまま緊迫状態が続くと、自分同士での闘いになって、
共倒れになってしまう危険性がある……。ここは一旦共闘の道を
掲げようではないか。俺の利益につながる間は協力を続け、折を見て
始末が必要なら始末すればいいのだ──
高槻らはそれぞれ、心の中でほくそ笑んだ。
『『『まぁ、そう気を荒立てるな……』』』
俺は優秀だ。
絶対に生き延びて、俺をコケにしやがった長瀬らには、きっかり
痛い目に遭わせてやるぜ……。