夜明けの死闘〜超高速の死闘〜


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「ぴ、ぴこ〜!!」
「ふにゃあ゛〜〜!!」
尻尾を強くつかまれた二匹の悲鳴が風に乗って後方へと飛んでいく。
「げっ!!追ってくるぜ…」
サイドミラーに小さく映る人の影。
足の裏から車輪を射出し、単車のスピードについてくるHM-13
「ろぼっとってのはなんでもアリだな…」
御堂が左へと単車を傾けた。
チュイン!!
恐るべき速度で御堂のすぐ右を弾丸が通りぬけた。
「おい、詠美!死にたくなかったら丸くなってじっとしてろ!
 この畜生共も持っておけ!!」
御堂はこの時初めて詠美を名前で呼んだ。
詠美に2体の動物を預け、身軽になった御堂はさらにアクセルを踏み込んだ。
「ひゃっほ〜〜〜う!!」
曲がりくねる山道を左右に揺れながらトップスピードで走り抜ける。
だが、そんな単車をいくつもの弾丸の嵐が倍以上のスピードで追い越していく。
「ちっ!逃げ回るのは性に合わねぇぜ!」
やがて開けた前方…道がなかった。
「ちょっと…崖!崖!!」
詠美が前方を指差して悲鳴を上げる。
「動くなって言っただろ!…飛ぶぜ」
「えっ!ちょっと!!」
前輪が浮かぶ感覚。
ウィリーさせて一気に崖へと突っ込む。
「し、死ぬ!しぬって〜〜」
「ここで止まった方が確実に死ぬんだ……よおっ!!」

きれいに車体が放物線を描いた――
一瞬の浮遊感。詠美はその自分の感情までもが宙に浮かんでいく感触がした。
そしてややあって後輪に衝撃。
「大成功だぜ!」
約10メートルの幅の崖を一気に飛び越え、歓喜の声をあげる――が。
「げっ!ほんとにすげぇろぼっとだぜぇ…あの男に余裕があったのもうなずけらぁ」
ミラーに宙を舞うHMの影が映った。
チュイン――!!
崖を飛んだ後もなお走りつづける単車へ飛んでくる弾丸の嵐。
「けっ!!」
アクセルをさらに開けながらまだ空中にいるHM-13を狙い撃つ!
ガイーン!!
見事に胸部へと2発ヒットしたが、まったくダメージを与えられない。
ロボはそのまま着地し、さらにスピードを上げて追ってくる。
「まともに当たったってのにガイーン…だってよ。このままじゃジリ貧だなぁ、おい」
「ど、同意求められてもこまるわよ!!」
その会話はすごい勢いで流れる景色と共に消えていく。
カシーン!!
弾丸が切れたのか、銃を捨て、また新たに銃を手に装填するHMの姿がミラー越しに見える。
「弾丸装填じゃなくて銃装填かよ…現代科学ってのはすげぇな」
「か、感心してる場合じゃないでしょぉ!!」
御堂の服を詠美が強く握り締める。
「まあ、そう言うな……って!!」
さらに襲いくる弾丸をかわしながら、今度は地面に弾丸を撃ちこむ!
ガァーーン!!
弾かれた石が無数に地面に散らばった。
「………!!」
その石に車輪を取られ、HMがぐらつく。
「あばよ!!」
さらにその脳天へと弾丸を撃ちこんだ。
「……!!」
HMの上体が後方へ大きくぐらついた。
そんなHMの姿が景色と共にミラーから消えていった。

若干余裕が出てきたのか、詠美が落ち着いて呟く。
「あんたって……すごいのね…倒したの?」
「いや…あんぐらいで参るろぼっとなら苦労はしねぇ……」
「でも…まいたんだよね?」
「いや…追ってくるぜ、きっとな…」
「ふみゅ〜ん…そんなぁ〜」
涙声になる詠美を無視して前方を見据える。
「ほうら、おいでなすったぜ、どうあっても俺と決着つけたいらしいぜ…」
前方から猛スピードで突っ込んでくる影。
どのようなルートを通ったかは知らないが、前方へ先回りしたHMがこちらへ向かってくる。
チュイン!!
今度は前方からすれ違う弾丸。
「ちっ!どうせ戦うなら人間がやりやしーんだよ!!」
右へ単車を一気に傾け、それをやり過ごしながら、1発、2発!!
その2発は双方の腕に装備されていたHMの銃を再び弾き飛ばした。

新たな銃がHMの体から射出されるまで約2秒――。
その一瞬に御堂は賭けた。
「また飛ぶぜ!目ぇつぶってしっかり俺様に掴まってろ!!」
「えっ!?」
再びウィリーさせ、HMの眼前までせまる――!!
「おらよ、プレゼントだ!受け取りなぁ!!」
御堂は詠美をしっかり抱えると、単車の背を蹴って宙に飛んだ――!
「―――!!回避不能――!!」
HMの言葉が風とエンジン音にまぎれて消えた。
「死ね!!」
器用に空中から単車のタンクに弾丸を2発撃ちこんだ。
「――!!」

HMと単車が接触する瞬間、弾丸がタンクを撃ちぬき、大爆発を引き起こした。

「うおおっ!?」
「きゃぁっ!」
「ぴこぴこ〜〜!」
「にゃう〜!!」
その爆風がさらに空中の御堂と詠美を吹き飛ばした。
「詠美!体丸めてじっとしてろ!!」
御堂はそのままぐるりと器用に回転して草むらへと突っ込んだ。
「ぐぅっ!!」
胸に詠美を抱きながら、そのまま転がってショックを吸収する。
いかにうまく着地したとはいえ、猛スピードで爆走る単車から飛び降りた衝撃は御堂をかなり痛めつけた。
「はあ、はあ、…い、生きてるの!?」
「そ、そうみてぇだな…久しぶりにスリルあったぜぇ…」
「た、倒したの!?」
「さすがに無事じゃねぇだろ…だがまだ確認したわけじゃねぇ…動くなよ」
爆発し、燃えさかる単車の方を見つめ、御堂はぎょっとなった。
「目標捕捉――発射!」
ドン!!ドン!!
「がっ……!!」
御堂の左胸に、正確に2発弾丸が撃ちこまれた。
「あ……っ…」
そのまま倒れゆく御堂を、何が起きたか分からないように見つめることしかできなかった。

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