Good-bye dear
第六回放送が流れ、続いて高槻処分の放送が流れた。
「また、死んだな。それにしても高槻の野郎、ざまぁみろってんだ」
悪態をつく。
そんなことをしても、死んだ人は帰ってこない。
(香里は、帰ってこない)
だからこそ、悪態つかずにはいられなかった。
「……ねぇ、ジュン?」
同じ部屋。暗闇の中からレミイが言った。
北川は一瞬、誰に呼ばれているのかわからなかった。
今まで聞いたことがない声だった。
暗い色。悲しみ、絶望、そんな色のこもった声。
「どうした?」
なるべく平静を装って訊き返した。
「ジュンは、朝になるまで動かない、って言ったよネ?」
「そうだな。今はゆっくり休む時間だ。寝る子は育つぞ?」
動揺は収まっていない。いつもの馬鹿トークにも、キレがない。
自覚できる自分が情けなかった。
「じゃあ、ここでバイバイだネ。
今までアリガトウ、ジュン」
静かに立ち上がり、レミィは自分の荷物を持った。
「ちょ、ちょっと待てよ!」
慌てて北川はくいついた。
「何があった突然……。
って、さっきの放送か?」
「……ウン。親友が二人……。
今すぐにでも、探しに行くヨ」
北川の方を見もしないで、言った。
それは決意。
あまりにも、どこまでも哀しい決意。
「そうか。仕方ないな。俺には何も言えない……悪い」
北川は悟っていた。
朝までここにいるのが一番安全なのは間違いない。
だがいくらそんなことを説いても、ある種の決意を固めた人間には無駄なのだ。
さっきの、祐一のように。
だから、自分のやることも決まっていた。
「ウウン、気にすることないヨ!
じゃあ、行くね。
バイバイ……」
レミィは部屋のドアノブに手をかけた。
「だから待てって。
まだ俺は、荷物片付けてないぞ」
「……え?」
振り向く。
北川はせかせかと自分の荷物を仕舞いこんでいるところだった。
「ジュン……どうして?」
「そんなこと言われてもなぁ……」
手を休めずに言った。
「旅は道連れって言うしな。
それにこのまま悲痛な決意背負った女の子一人で行かせられるわけないだろ。
人間として、男として。
一蓮托生だ、こうなったら。ついていくぞ。
一緒に行ってやりたいんだよ、俺が。」
そう一気にまくしたてる。
言ってしまって、気付く。
(何を恥ずかしいこと言ってるんだ、この口はーっ!!!)
後悔しても仕方がない。
言ってしまった。仕方がない。
「さて、と。行こうか」
荷物を全部片付け、鞄を背負う。
「ジュン!」
ずっと黙って見ていたレミィが北川に飛びついた。
「ジュン、サンキュー! だいすきヨ!!」
レミィの髪の匂いが、なんだか妙に、くすぐったかった。
(香里?
お前は相沢のこと好きだったんだよな?
俺はお前のこと、本当に好きだったんだぞ。
だけど……
俺、他にも、守りたい人ができたみたいだ。
おいおい、呆れないで見ててくれよ?
……さよならだ)