企む三人 彷徨う二人


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例えば鳥のように。
空から見下ろしたなら、大きな三角形をつくるように等速で歩く三人組を見ること
ができるだろう。

高槻06がレーダーで位置確認をしながらAUGで援護。01が斜め前を行き02が
更に先行する。
基本的能力に大差がないだけに持ち物だけが、彼らの位置関係を決定する
要因となった。
もし同じ装備だったなら協力体制すら危うかったかもしれない。
環境の違いによる装備差が、幸運にも-----他の参加者には不運なのだが
-----今の状態を作り上げているのだった。

《マスターモールド、ベレッタ、聞こえるか?…レーダー範囲内に二人入ったぞ》
結局彼らは各人の得物の社名で呼び合うことにした。
他に見分けようはないから。
《ステアー、名前はわかるか?》
高槻06-----レーダーを持っていた高槻だが、今はステアーと呼ばれる-----
は今まで参加者の動向を管理していたため、レーダーの数字と実際の名前を
ほぼ把握している。
《当然だ。
 おっと…これは懐かしいな、名倉由依だぞ。
 それにもう一人は…なんと、巳間晴香だ》

巳間晴香。
名倉由依よりも高槻達にとっては脅威であり、かつ面白味のある相手。
そして三人の高槻達の一人は既に遭遇し、脅し、騙した相手。
いやらしい笑みを浮かべてマスターモールドが提案する。
《ステアー、ベレッタ、俺に考えがある。実はだな…》


例えば鳥のように。
空から見下ろしたなら、鰐の顎に自ら迷い込む小魚のような二人組を見ること
ができるだろう。

由依は晴香の背中を見つめて重い足を引き摺るように歩いていた。
耕一さんや七瀬さん、初音ちゃん達と別れた当初は、いつもの晴香さんだった。
『由依、しばらく会わないうちに歩くの速くなったなあ』
『そうですかー?えへへ、晴香さんに誉められるなんて、ちょっと嬉しいですねー』
『貧乳なんだから、それくらい早くて当然だけどね』
いつものやりとり。
『貧乳貧乳言わないで下さい!これでも少しは…』
『視認できないうちは、いくら大きくなっても貧乳なのよ?』
『ひ、酷いです…』
オチまでいつも通りだけど。

この島に来て、やっと安心して楽しく話せる相手だった。
-----けれど。
あの放送以来、晴香さんは人が変わってしまったように寡黙になった。

”…前回の放送からこれまでの死者だ。
 013 緒方理奈 015 杜若きよみ(黒) 018 柏木楓 025 神岸あかり…”

…神岸あかりさん。
それは高槻によって人質にとられたという、晴香さんの仲間。
皆で相談し、人質作戦に何らかの偽装があると結論したのだが…このタイミング
での死亡発表は結論を揺るがすものとなった。

その後、高槻の放逐が告げられた。
晴香さんのもう一人の仲間、保科智子さんも本当に捕らえられていたならば。
彼女は釈放されるのだろうか?
それとも、高槻の命令は生きたままなのか?

わからない。

何も。
わからない。

今は暗い空。
やがて朝の明るさをを迎えるだろうけれど。
私たちのこころは。
いつまでも闇の中を彷徨うままだった。

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