俺のこの手は汚れているけど


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 あれから数時間の時が経った。
 神尾観鈴は泣き疲れたのか、あの後すぐに眠った。それを見届けた晴子は「うちもちょっと寝てええか?」そう言って、観鈴を抱いたまま眠った。
 そのふたりを見ながら、辺りに注意を払いながら、同じように国崎往人も同じように寝転がった。
 仰向けに寝転がり、空を見上げると、いつもと同じような朝だった。往人が旅をしている時、毎日のように何度も見たなんでもない朝の風景。
 ピンク色の空に、雲が流れていて、小鳥のさえずりが聞こえて、そんな普通の朝靴風景。それが何故かこの場所では違和感を覚えた。

 こんな状況で綺麗な空ってのも残酷なもんかもしれないな。
 往人はそう思った。そして、ぎゅっと手を握り締め、何度も心に誓った。

 観鈴と晴子。この親子には、こんな場所じゃなく、幸せな場所。安らげる場所でこんな空を見させてやりたい。そうなるように、俺は命を賭けてこいつらを守るしかない。と。

「往人さん。おはよ」
 往人の後ろには目を擦りながら立つ、観鈴がいた。
「まだ、早い。これからなにがあるかわからないんだ。もう少し、寝てろ」
 往人は投げ捨てるように言うと、観鈴は、
「だいじょうぶ。往人さんこそ、寝ないで大丈夫?」
 そう言って、にはは、と笑った。
「俺は大丈夫だから寝てろ」
 往人が少し強く言うと、
「うん、判った。それじゃぁ、もうちょっと、寝るね」
 と観鈴は言った。もう少しつっかかってくると思っていただけに、少し、予想外の反応だった。
 やっぱり、相当疲れているんだな。
 晴子の横にいって寝転ぶ観鈴を見ながら、もう一度、往人は空に目をやった。
 空は、朝焼けから、朝へと、変わろうとしていた。 

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