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命の炎〜盛る灯〜


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だんだんと大きくなる足音、忍ばせているのだろうが、他に音のないこの世界ではいやにはっきりと聞こえた。
(ごめんね…マナちゃん…)
揺らぐ景色の中、その場にへたり込む。
(私…きっとまた夜になったらマナちゃんを殺そうとしてしまうかもしれないから)
マナをこの手にかけたあの時…東の空が紫色に染まったあの時、もう一人の自分の支配力が弱まった。
そのおかげで、もう大切な人を失わずにすんだ。
だけど、また、夜になったら……
(ごめんね、もう一人の私…ごめんね、お姉ちゃん。聞こえてる?私、行くね…)
右腕のバンダナを、―――――解き放った。
(私、魔法、使えるよ。とびっきりの魔法)
先程ぶちまけたアルコールの瓶に残った液体を黄色いバンダナに染み込ませる。
(往人くんに、もう一度…会いたかったな……)
このままでは、崖下にいるマナも命も危ないだろう。
だから、マナを守る魔法。

――私の最初で最後の…魔法…マナちゃんを…守るんだ――

震える手でマッチを擦る。
下の食堂でくすねておいたマッチ。
小さな明りが部屋に点った。

ボッ……
カツカツカツ……
部屋の前まで来た足音と、ほぼ同時にバンダナが炎で輝いた。

一瞬の静寂――
そして。

パラララララララララッ!!!

扉の向こうから無数の銃声。
「………!!」
何かの未知の衝撃に、佳乃の体が壁際まで吹き飛んだ。

バンっ!!
いくつもの穴の開いた扉がゆっくりと部屋の内側へ倒れた。
機関銃を構え、立っている女、全身凶器と化していた弥生の姿だった。
「……」
もう一度、佳乃へと銃口を向ける。
ぐったりと壁際で頭を垂れている佳乃の手には激しく燃えさかるバンダナが握られていた。
「バイ…バイ…殺し屋一号さん……」
「……!!」
ソレが宙へと舞った。
パララッ!!
もう一度、短く銃声。佳乃の体がもう一度だけ、跳ねた。

ボッ!!
宙を舞ったソレがふわっと舞い降りたのはアルコールがたっぷりと染み込んだベッドの上。
燃えて、盛る。
「くっ……」
弥生がそれを確認すると、部屋から後ずさる。
そして佳乃をもう一度見たが、もう動いてはいなかった。
「……!!」
一瞬の躊躇。佳乃を連れ出そうか否か。
(何をバカな…もう死んでいるのに……それに殺したのは私。このような感情はナンセンスです…でも)
憐憫の視線を佳乃に向ける。
視線こそ佳乃に向けられたものだったが、その向こうに弥生の姿があったような気がした。
無意識の中にあった罪が、そうさせた。

既に部屋は炎で包まれていた。炎の向こうで佳乃の姿が陽炎で揺らぐ。
もう入ることも叶わない。
(また、殺したのですね、私は)
ここにいなかったもう一人の少女、マナのことも気にはなったが、ここを脱出するほかはない。

「げほっ!!」
弥生が激しい煙の中、ようやく外へと脱出したときにはもう、
炎が洋館全体を覆い尽くしていた。
灰色の煙が天高く上る。佳乃が放った炎、命の炎。
明るくなっていく東の空よりも赤く輝く。それは悲しくも美しかった。
「マナさんも…この中にいるのでしょうか……」
呆然とその炎を見つめた。弥生の瞳の中にその炎が揺らめく。
(私は…これからもずっと罪を重ねていくのですね…)
少しの間それに見入った後、そこから離れた。
もう明け方とはいえ、闇の中これだけの炎が燃え盛れば、誰かがここに来ないとも限らない。
これ以上、ここに留まるわけにもいかなかった。
(また新しい休憩場所を探さなければなりませんね……)

あと、どれだけ罪を重ねればいいのだろうか。
無意識の内に――何かの感情がこみ上げた。
気がついたら、血が滲むほどに拳を強く握り締めていた。


031 霧島佳乃 死亡

  【残り33人】

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