魂の導き手
――初めて出会った時。
それからどれくらい経ったんだろう?
まさかこんな形で出会うとは思いも寄らなかったけどな。
………。
もし。
もしも、こんな状況じゃなくて。
普通の生活の中で、全くの偶然で、再会出来たなら……
いや、再会出来たとして。
想いは伝わっただろうか?
――多分、無理だろうな。
ああ。
悔しいよな。
でも、もう、どうしようもない話だ――。
笑い出したい衝動に駆られた。
目は瞑ったままだったが、もしかしたら笑みを浮かべたかもしれない。
どっちだっていい。
どうせ、次の瞬間にはミンチだろうしな。
さぁ。
早く撃ってくれよ、茜。
いい加減立ってるのも疲れたからさ。
引き金を引くんだ――。
―――。
不意に、予感めいたモノ。
がしゃっ、という何かが落ちる音。
――ゆっくりと、目を開いた。
――あの人は、目を閉じています。
隣に居た人は、刀を引いてくれました。
――でも、撃ったら、多分私は死ぬんでしょうね。
隣の人に、切り裂かれて。
………。
あの人は。
目の前で、私が引き金を引くのを待っています。
だから、私は、狙いを定めて――。
その人の眉間に銃口を向けて――。
ああ……。
指が、動きません。
どうして。
私は、詩子を撃ちました。
そうすれば、甘えを棄てられると思ったから。
出来なければ――あそこには帰れない。
だから、撃ちました。
だから。
祐一も、撃てると思ったんです。
……お願い。
動いて下さい。
動いて下さい!
動いてッ!
――茜の指は、引き金を引く直前で止まっていた。
内心の葛藤とは裏腹に、その指は震えも、何も無かった。
本能が、無意識の内に――その行為を、完全に、拒否していたとも言えよう。
……ああ。
もう、ダメですね、私……。
ふふ。
自分の不甲斐なさに、笑えてしまいます。
そんなに、この人が大事だったんでしょうか?
……よく分かりませんが、そうなんでしょうね。
そうして。
茜の手の中にあった銃が、落ちた。
哀しき殺人鬼が、今、少女に戻る。