包有。


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「どうだ? ん? 鹿沼葉子」
たくさん殺しているかあ? 汚らしい顔を見せて、その男はそう言った。
高槻が、その悪意と共に尾行しているのに気付いたから、鹿沼葉子はすぐに、その男と対峙した。
空腹を抱えて歩いているのに、何だ? この男は。腹立たしい。
自分は一応ジョーカーの役割をやっている筈だ。こいつに尾行される筋合いはない。
「なんたってお前はジョーカーだもんなあ! 不可視の力も、制限されているとはいえ、それでも常人よりは、ずっとずっと強いもんなあ!」
「ええ、まったく」

「だが、これまでだわ」
かちゃり、と銃口を向ける。
「知っての通り、オレもこのくだらねえ殺し合いに巻き込まれたあ! だから、お前らみんな皆殺しにしなくちゃいかん!」
色々動いて貰ったが、結局これだ! 死んでくれ!
――手元には、折れた槍。ぐっと、それを握る。――
「この森はオレのクローンが包囲しているぅ! 森にいる数人を、殺す為だあ!」
――葉子は、それを聞いて、小さな溜息を吐く。

「わはははは! そんな槍ではオレは殺せなああ」

早かった。気付くと、葉子は高槻の横に立ち、
高槻が言い終わる前に、その首元を、短くなった槍で、とん、と叩いた。
それで、高槻は倒れた。
とどめを刺す前に、やる事があった。

銃を拾い、葉子は駆けた。――何処の誰かは知らないが、これ以上人を死なせるわけにはいかない。

「わたしはジョーカーです、ただし、あなた達にとっての」

そして、――同じ顔をした、高槻と――葉子は、対峙したのである。


【柏木耕一 七瀬留美 初音を捜して森に入るも高槻と遭遇】
【柏木初音 七瀬彰 高槻と遭遇も、そこに――】
【鹿沼葉子 ベレッタ高槻を倒し次の高槻と対峙】

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