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安堵&焦燥


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――おはよう、諸君。これから定時放送を行う――

学校内まで流れてきた死亡者放送。
本来なら悲しむべきもの。
実際、何人もの人間が亡くなっているのだ。
心の底から喜ぶことなんてできやしない。
それでも…いや、悲しいからこそ、出来る限り全身で喜びを表現した。
「やったよ!私らの死亡放送流れたよ!」
「うっ、うぐぅ!?」
むりやりあゆを引き寄せて喜びをぶつける。
パシパシ…グッグッ…!!
「うぐぅ……手がひりひりする……」
「そう言うなって、千鶴姉の勘は当たってたってわけだ」

――残りわずかとなってきたことなので、生存者発表も行う――

その声と重なって、今度は生き残りの参加者の名前が呼び出された。
三人の知り合いの名前も読み上げられる。
本来なら喜ぶべきこと。
だが…
「いけない…」
千鶴の顔に安堵の表情が浮かんでいたのもつかの間。
「耕一さん達は…私達が生きてることなんて知りません……!!」
その事実は、あゆと、梓の顔を曇らせるには充分だった。

「すぐに伝えに行かなきゃ…」
耕一や、初音の悲しむ顔が手にとるように分かる。もしも自分達が耕一の立場なら同じように思うはずだ。
楓を失った悲劇……それを再び味あわせてしまったこと。
「どうして忘れてたんだ、私達はっ!」
たとえ偽りの放送であっても、何も知らない耕一達の事を思うと強く胸が痛んだ。

「私が行きます。これは、提案した私の責任だから……」
千鶴が、スクッと立ち上がる。
初音の居場所は分からない、だが、耕一達は未だ怪我で小屋に寝ているはずだ。
「ちょっ……千鶴姉!?」
「もしかしたらまだ耕一さん達はあそこにいるかもしれません
 ですが今の放送を聞いたら…たとえどんな怪我を負っていても動くはずです。
 耕一さんは……そんな人ですから」
「だったらみんなで行けばいいだろ?」
「……私達は死んでいます、体面上では。見つかるわけにはいかないでしょう?
 私一人の方が安全です」
「だけど…千鶴姉!」
「あゆちゃんもいるのに?…危険を犯すのは私だけで充分だから」
「千鶴ね――」
「すぐに帰ってくるから。できれば耕一さん達も連れて…ね?
 その後すぐに初音も探さないとね。
 ……でも、もしも私が2時間経っても戻って来なかったら…
 梓、その時は自分の思う通りに行動して」

そして、梓に有無を言わせず千鶴は教室を飛び出していった。

「バカだよ…千鶴姉……」
梓が呟く。
「いつもいつも…自分だけ責任を背負って……バカッ……」
すぐに追いたかったが…梓には出来なかった。
確かに、全員で動くのはあまり得策じゃない。
ただ耕一達に会いに行くだけなのだから……理論では。

それでも…
「外には殺人鬼がいるかもしれないんだぜ…どうして自分だけ……」
感情はそうはいかなかった。
「うぐぅ…たぶんボクのせいだよね…ボクが足出まといだから……」
「あゆのせいじゃないよ…」
梓があゆの頭を優しく撫でてやる。
「うぐ…」
くすぐったそうにあゆが目を細めた。
(絶対に帰って来てくれよ、千鶴姉っ!!)
2時間経っても戻って来なかったら……あってはならないことを強く祈りながら、撫で続けた。


千鶴は駆ける。影から影へ。
(どうして私はこんなことに気付かなかったのかしら…ごめんね、初音…耕一さん)
後悔してもしきれない。
しかも、初音に限ってはどこにいるのかも分からないままだ。
早く安心させたい、早く伝えてあげたい。
(私は…私達は…生きてますっ!!)
見つからないように、かつ全速力で木々の間を駆ける。耕一や七瀬と別れた小屋へ。

もちろん千鶴はまだ知らない、そこに浩平の死体があること、
そして放送が流れるずっと前から耕一達がそこにいないということに。


【柏木千鶴 小屋へ移動開始】
【柏木梓、月宮あゆ 学校で待機 残り2時間】

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