共生。


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――そういえば。
倒れた高槻に歩み寄る。
「私の力を制限した、装置は――」

油断しなければ良かった、と心から思う。

ガァンッ!

――腹を貫かれたっ!
「はぁっ――!」
まさか、もう次のクローンがっ――
振り返り、そこに立っていたのは。

「さっきはよくも人の銃奪いやがってっ――」

先程、自分が打ちのめしたクローンらしい。
それとも、これがオリジナルなのか?
右手には銃。そう、先程自分が放った銃だ。しまったなあ。
意識が飛びそうになる。

くそ……

その時だった。

「お姉さんっ!」

少女が、拳銃を持って一人駆けてくるのが見えた。
馬鹿だな、あれだけ逃げろっていったのに。
哀しげな表情を浮かべると、その少女は、一瞬躊躇した顔をした。
高槻は、また、あのいやらしそうな眼で、言った。
「おお、なんて可愛らしい少女だ!」

そして、その汚れた目のまま、拳銃を向けると、
その足下を、ガァン、と撃った。

――それで、その少女は、倒れた。
「わはははは、なんて無謀な」
高槻は葉子から、小銃を奪い取った。
保険、だろうか。どのみち無理だ。わたしはこれ以上戦えない。
早く、殺せ。
――だが、高槻は、葉子の耳元で、こんな事を呟いた。
「鹿沼葉子。お前は後回しだ。あの可愛い子を犯してから、お前犯してやる」

なん、だとっ――
葉子は――目を見開いて、その悪魔を、見た。

――柏木初音は、二人が離れていくのを見て、漸く立ち上がる事が出来た。
今は、あの女の人の好意に甘えるべきだ。
何より、大切な人が、刻一刻と悪い状況に陥っているのだ。
銃も持っていた。だから、きっと、大丈夫だと。

けれど、目に入ってしまった。
明らかに身のこなしが鈍くなったのが。
そして、目に浮かんでしまった。
打ちのめされてしまうだろう姿が。

彰も大切だ。
間違いなく、もう、危険な状態なのだ。
自分には武器だってない、ないじゃないか――

そこで、漸く初音は思い出す。
武器は、持っていたじゃないか。
人づてに自分の所に来た、拳銃が。
撃てるかは判らない、けれど。
彰の事も気にかかったが――だが、初音には、見殺しには出来なかった。

案の定、先の少女は倒れている。――腹から、血を流して。
そして、多分、とどめを刺そうと、近寄っている。
だから、初音は大声を上げた。少しでもこちらに注意を引きつけるため。
彰を背中から降ろす。そして。
「お姉さんっ!」
こちらを見た、傷ついた少女は、――哀しそうな顔をした。

――次の瞬間に、初音の足は、打ち抜かれた。

「あうっ!」
痛いっ――! ――信じられないほどの激痛が、初音の太股を襲った。
それまでに自分の身体を支配していた、目の前の人を死なせたくない、という意志は、一瞬で途切れる。
痛い、痛い、痛い! 死ぬのはこれよりずっと、痛いのか?
怖い、怖い、怖い! 止めておけば良かった、逃げれば、良かったっ――
見ると、高槻は先程の美しい少女に近付いている。
そして、少女の片手に握られていた小銃を奪い取り、
「抵抗できないよう、な」
言って、高槻はまた笑う。
そして、こちらを見た。
「可愛らしい少女だ、まったく、健気だあ!」
――初音は、怯えた表情で、それを見た。
先程、自分がされかかった事を思い出す。
じりじり、と近付いてくる高槻に対して初音が出来る抵抗は、
ただ、悲鳴を上げるだけ。
右手の拳銃を奪われる――初音は、無抵抗の姿になってしまった。

「いやぁぁ! 助けてぇっ――!」

葉子は、悔しそうに、高槻を睨んだ。
ヘルメットを被っていて、今度も、首だけが、無防備だ。
だが、今の自分には、これ以上動く事は出来ない。銃も奪われ、もう、手も足も出ない。
目の前の少女が犯されるのを見なければならない。

目を閉じる。
目の前の少女がさらされる、その悲劇を見たくなかった。
だが、耳は閉じる事が出来ないから。

「いやだよ、助けてよ、助けてよ、いやだ、いやだよっ」

絶望。それは、あまりにも深い。
くそっ――何で、私はっ――!
目を見開いた。
少女を――救わなければ、這ってでも、止めなければ、
と――

そこで、葉子が見たモノは、何だったのだろうか?
何だったか確認する前に、意識は途切れた。

その未発達な身体を嬲り始める。殆どないに等しいような乳房を、服の上から撫でる。
「やめてぇっ!」
強引に服を破り、その薄い胸を露わにする。真っ白な胸が、視界に眩しい。
「わははは、なんて可愛いんだ」
そして、それをいじくり始める。

「嫌だ、嫌だ、やめて、やめてぇ」
下半身にも手を伸ばす。スカートの上からそれをなぞる。
そして、内部に指を侵入させた。柔らかな身体を触る。白い肌を舐め回すように見る。
「嫌だよ、やめてよ、やめてよぉ……」
羞恥で、あるいは絶望で、顔を悲哀の相に充ち満ちさせて、その少女は泣いた。
良い。こういう何も知らない娘を犯すのは、何より楽しい!

もう、高槻は我慢ならなかった。
幼女愛好者と呼ばれようが、穴さえあれば関係がない!
大体、ただでさえここ数日、女と触れあう機会すらなかったわけだからな!
――鹿沼葉子より、この少女を先に犯そうと考えたのは、自分に多少そのケがあるからか?
くすくすと笑いながら、まあ、それでも良いだろう、と、そう呟いた。
既に屹立した自分のそれを、未だ濡れさえしていないそこに、強引に突き立てようとした、

その瞬間。

――自らの首元に、衝撃を感じた。
血の痛み。
何で痛みが走るのだ。
誰も、この周りにはいない筈だ。

振り返ろうとしたその瞬間、
――ヘルメットを強引に脱がされた。

「――死ね」

真っ赤な額。――それは、人のものには見えなかった。
真っ黒な髪が、その顔の半分以上を覆い隠している。
光るのは、あまりに落ちくぼんだ瞳。そして、その奥に見える、漆黒の影。
サブマシンガンの銃口を口の中に突っ込まれる。
「ひゃめろっ――」
――この青年は、自分の下にいた少女に、傷一つ追わせることなく、
自分の首を、あのサブマシンガンで、正確に打ち抜いたのか?

その顔が誰だか判った時、既にすべては遅かった。

ぱらららら。

喉が弾けるような痛み。そもそも、首元からも夥しい血。
死にたくない、と考える前に、きっと、高槻は死んでいる。
――皮膚が弾け飛び、顔が半分消し飛び、そして、遂には、意識も途切れた。

「――彰、お兄ちゃん」

そんな声が、聞こえたような気がしたが、高槻にはそれを聞いても、何の感慨も湧かなかった。

――立ち上がった筈の彰は、だが、すぐに倒れた。
初音が呼ぶ声が聞こえた。助けを呼ぶ声が。
だから、一瞬、目が覚めたのだろうか?

そして彰はまた、深い闇の中に落ちていく。
初音の呼ぶ声が聞こえる。
けれど返事は出来ない。少し寝かせろ。


【高槻 ステアー・ベレッタ 共に死亡。共にロリコン】
【七瀬彰 柏木初音 彰は初音のピンチに起きあがるも、またすぐに気を失う。
             初音は犯されかかるも、足に怪我を負ったのみ。服は破けたが……】
【鹿沼葉子 ステアーを殺すも、腹を打ち抜かれて重傷。気絶。反射兵器は瓦解。】

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