Sweetless Days
二人は、歩き出した。
足取りが、一人の時とは全然違う。
なにやら道のりが、やけに明るくすがすがしく感じられる。
郁未が背負った鞄の重さは、そう大したものではないけれど。
少年の持った”本”は、それだけでは何も生み出すことは無いけど。
何故か、不安は無い。
「ねぇ」
「ん?」
「高槻を倒したら……どうするの?」
「そうだね……」
少し沈黙して、言った。
「高槻の裏にいる黒幕は潰したいところだね」
笑顔で、いつもどおりの笑顔で言った。
――戻るべき日常など、僕には無い。
――なぜならそれはFARGOそのものだったから。
――ならば僕は、ただ死に場所を求めているだけなんだろうか?
――それとも、本当に、郁未と……。
「私は――」
郁未が口を開いた。
「あの人と、決着をつけたい」
「お母さんを……殺した人かい?」
こくっ、と郁未は頷いた。
「――――――――――――――」
「……不服? 私が復讐に走ろうとしていること」
「――――――いや」
不可視の力が封じられた今、君はただの女の子に過ぎないけど――。
「――君がやりたいことをやればいいさ」
「……あなたは?」
「……ん?」
「あなたは……どうなの? その、郁美ちゃんを殺した奴とか」
少年の顔から、笑みが消える。
「――――――――殺すね、必ず」