生キル意味ヲ
自分の存在意義を考えてみる――。
基本的には「足手まとい」以外の何物でも無いと思っている。
そして、自分自身すらもそれに甘んじていると。
それでいいのだろうか?
――いいわけ、ないよ。
当然だ。
目の前で、もう随分と長く共に行動している鬼の姉妹が、何やら言い争っている。
口喧嘩の絶えない姉妹だ――
もちろん、その内容も多種多彩だ。
よくそれだけ喧嘩出来るものだとも思える。
無論、それだけ仲が良いとも取れるのだが。
不意に、笑みが零れた。
失った家族の温かみ。
それを、そこに感じてしまったから。
――しかし、胸について言うのは禁句だと思ったあゆである。
――ボクには何があるんだろう?
ふと、あゆはそんな事を考えた。
自分は。
自分で考える限りでは、普通の少女であると。
それはもちろん、「うぐぅ」とか連呼する少女が普通とは言えないかもしれぬが。
――祐一君にも散々言われたし、ね。
いや、しかし。
それでも――
自分は、容易く人を殺す事など出来ない。
確認する。
己が、平常であると。
……「まだ」、平常であると。
だけど。
――それでいいのかな……。
そんな事を思ってしまう。
――イキノコルタメニハコロサナクテハナラナイ――
絶対の――この島に於いての――ルール。
それに抗うということは。
即ち、死を意味する。
もちろん、死ぬのはイヤだ。
だけど、殺すのもイヤだ。
それでどうやって生き残る?
結局のところ、自分は同行者に頼りっぱなしなのだ。
そして。
同行者に、戦わせている。
もし、万が一。
自分が狙われて、それで。
自分を守る為に、二人が死んだなら――
それは「殺した」のと変わりはない。
逞しくあらねばならない。
一人で――
自分の命を守りきれるくらいには。
それだけの力が欲しかった。
目の前の姉妹はとうとう取っ組み合いの喧嘩を始めている。
相変わらずだ。
こんな状況であるのに。
――いや、しかし。
やはり胸の話「だけ」は勘弁してほしい。
この島に来てから、感じていたものがある。
酷く――哀しい気配?
頭の奥底に、ちりちりと、伝わる何か。
酷く、深い、深い、カナシミ。
いや、それとも。
―――。
それの主は何処にいる?
自分だけが分かるそれ。
――ボクだけが分かる――。
即ち。
それは、一つの存在意義として成り立つのではないか?
"それ"が一体何かは分からない。
だけど。
――ひょっとしたら、ボクだけにしか分からないのかもしれないから。
だから。
探さなくてはならない――
"それ"を。
自分が。
自分が此処に在った意味を――
残す為にも。