厭
あのあと、ガスッ、とまた音がした。
それは、何の音だったのだろうか。
もう相沢祐一にはそれが何かを理解することなどできなかった。
祐一はそのまま、ゴツゴツとした岩の広がる岩場に、腰から砕け落ちた。
ここは、どこだ? よくわからない。 目の前には、なにもない。
音もない、風もない。ただ、真っ黒な世界。
そこに俺はたった一人で立っていた。
目の前には、あなたが同じように、立っていた。
あなたは、これからどうしたいの? そう、あなたは聞いた。
俺はあなたに、もう疲れた。もう休みたい。と答えた。
あなたは言った。 そうか、このまま、茜のところにいくのか? と。
あぁ、そうしたい。と俺は答えた。
でも、そうはいかない。とあなたは言った。
なんで、もういやなんだ。もうすべてがいやなんだ。
俺はここにもう居たくない。存在したくない。
もうすべて消えてなくなってしまいたい。
もう何も考える事もしたくないんだ!
俺はそう叫んだ。
ならあなたは死ぬのか? とあなたは言った。
あぁ。と俺は言った。
無理だよ。あなたは弱いから、死ぬことなんてできないさ、きっと。 とあなたは言った。
無言の空間が続いた。
沈黙を破り、口を開いたのはあなただった。
ほら、お友達が迎えに来た。
風を感じた。
俺は、生きていた。
そう、相沢祐一は思った。だが、それ以外、何も考えることはできなかった。
「おい、相沢っ!」
声が聞こえた。体が、びくん、と跳ねたような気がした。
ふと、目の前が明るくなった。
目の前には、祐一にとって、久しぶりに見た、見なれた友人と、見たことも無い、黄色の髪をした、女の子がいた。