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力の渦


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カタカタカタ……
機械の檻に囲まれ、冷たい光を浴びながら。
地から湧き出る、鬼の泣き声のような稼動音の中。
源五郎は調査を進めている。

(女子061番)月宮あゆ。
これも怪しいな、そう思って画像を閉じずに並べておく。
画面には文字の羅列と、柏木梓、柏木千鶴、そして月宮あゆが並んでいた。
更に調査を進めるべく、データを読みこもうとした時。

ピッピッピ…
携帯が異常音を発しはじめた。
この音は…HM-12の緊急コード、破損警告だ。
それを聞いて、肩の力を抜く。
調査の腰を折られて、気抜けした顔をしてみる。

「まだまだ大丈夫だとは思うが…確認してみるか」
源五郎は早速破損状態をチェックしはじめる。
なんと言っても自分の身体よりもロボットが好きなのだから、仕方がない。
特にHM-12型は源五郎のお気に入りなのだ。

「ふむ…外皮コーティングの融解、右腕射出口破損、左腕短剣損傷…か」
煙草をひょいと咥え、二・三度ぷらぷらと遊ばせる。

なあに、まだまだ。
そんな余裕すら持って、源五郎は煙草に火をつける。
ぷかぷかと煙を吐きながら考える。

「柏木耕一…それとも坂神蝉丸、か…?
 生物とは、やり方次第で、そこまで達するものなのか…」
源五郎は”人間のこころ”というものを信奉する一方で、”生身の身体”の限界を
感じ、失望していた。
全ての機械に依存する人間は、人間のどこかに諦めを感じているのかもしれない。
興味を覚えて、別の端末に移動する。
「ちょっとばかり、片目を借りるよHM-12…」


「がはっ……!?」
全員の期待に応え、未知の性能を持つロボット相手に戦い続けた武人が、遂に
決定の一打を許してしまっていた。
「攻撃……成功…」
冷たく、事務的に。
無感動な事実が述べられる。

くるくると回るように崩れ落ちる蝉丸。
叫ぶ彰を後ろに残し、七瀬が駆け寄って抱きとめる。
「(´д`)せ…蝉丸っ!」
月代が蝉丸に被さる。

…不覚。
無意識にだろう、そう呟いて蝉丸は力尽きる。
ロボットの刃に絡む血が、鮮やかだ-----動脈をやられているのだろうか。
月代に蝉丸を任せ、七瀬は一人、HM-12に対峙する。

ひどく透明な瞳孔が、高らかに機械であることを主張していた。
(機械のくせに-----)
悔しさをぶつけるように、その眼を注視していた七瀬が、ぎょっとした。

右眼がぐるん、と。
左眼と全く違う方向に動いたのだ。

その眼は後ろにいる彰、もしくは駈け寄っているであろう初音を捕らえた。
そう確信し七瀬は焦りを覚える。
危機感に汗が噴き出す。
ふらつく身体に鞭を打ち、闘争を続けるべく得物を握るその手に、力をこめる。
(機械のくせに-----生意気なのよ!)


「えーと…なんだ?装備充電中か。放電したな?
 成功?坂神蝉丸は倒したのか?
 で…なんだ?この坂神を引きずっているお面(´д`)は?
 それから…七瀬留美。
 ん?なんだこいつは?何やってるんだ?柏木耕一か?」
ぶつぶつ言いながら右眼のカメラを動かしていく。

「んー…こりゃひどい怪我だな、彰くんか。
 巳間晴香は…こっちには居ないようだな…」
更にカメラを動かす。
そのとき。
源五郎は、その眼の動きを見た七瀬と同様に、ぎょっとする。

 「ん?これは?
  げ…源三郎さんか!?」
 泡を吹きながら、地に伏す源五郎の姿が、そこにあった。

ドガ!
画像が揺れる。
「なんだ?!
 くっ…これ以上は無理か!」
仕方なく統制を再度HM-12に戻す。

「HM-12、方針変更だ。
 やれることをやれ。殺して構わん。
 充電終了次第、獅子吼の使用も認める」
源五郎は方針を改めることにした。
それは、自らもリスクを負わざるを得ない情況に陥ったと、そう覚悟した上での
決断であった。 


ちょうどHM-12の右側から。
初音は無謀にも体当たりしていた。
「初音ちゃん!」
七瀬が間に割って入る。
普通なら許されぬはずの、迂闊な動きにロボットは反応しなかった。

「コマンド変更」
短く、何を意味するか解らない。
だが不吉な予感を漂わせ、ロボットは静かに宣言した。
七瀬と初音の、目の前で。

「…くっ!」
恐怖に屈することなく、七瀬は両足を広げ重心を下げる。
横から振り上げた鉄パイプを振り下ろす。

叩きつけるように打ち降ろされた必殺の一撃。
しかし、それを弾くようにHM-12の腕が唸りをあげて振り回される。
腰から上、360度の回転。
七瀬と初音が煽りをくって転倒する。
明らかに今までと異なる、人外の動きへの変化に七瀬は戸惑いながらも叫ぶ。
「は…初音ちゃん、大丈夫!?」
「う、うんっ!」

お互いの身を案じる二人をよそに、ロボットは蝉丸と月代のほうに正対していた。
「充電終了」
ただそれだけを次げて、HM-12は口を開く。
いや、人間ならば顎を外す、と言った方が正しい。
奇妙なまでに直立しながら、両眼の瞳孔が激しく開閉する。
距離を測っている、七瀬はそう直感した。

開いた口からだろう。
しかし世界全体が鳴り響くような、咆哮が発せられる。

コオオオオオォォォォォ…

地の音。

不気味だった。
噴き出す汗も乾ききり、瞬きすら忘れて走り出す。
(これ以上、死なせて堪るか-----!!)

ひょおおおおぉぉぉぉん!!

風の音。

理由はない。
ただ直感に従い、七瀬は意識のない蝉丸をひっぱり、投げ飛ばす。
「逃げなさい!」
月代に叫ぶ。
そして自らも、横に飛ぶ。
その咆哮に、間違いなく恐怖を感じていた。

…タイミングが、遅れた。
いくつもの不確定な要素の積み重ねの中で、七瀬はそれだけを確信していた。
(間に…合わないっ!?)

イイイイイィィィィィィン!!

切り裂くような無音に近しい高音とともに、七瀬は腕に痺れを感じ、得物を取り落とす。
先ほどまで背負っていた岩は砂と化し、鉄パイプは半ばから塵と化していた。
それでも無事だったのだから…奇跡がおこったように思えた。
(かわした…の?)

ロボットが、転倒している。

見上げる七瀬の視界に。
太陽を背負って女が立っていた。

「良く解んないけど…相変わらず無様なヤツね」

日本刀を閃かせ。
にっこり笑って女は言った。

「助太刀、するわよ」

そこには晴香が、立っていた。
貸しだからね、と余計な一言を付け加えて。


5体のロボットを前に、源五郎は考えていた。
それは、施設を守るHMシリーズの全てだ。
戦闘用の二体を信頼し、あまり警備は置いていなかった。

「見捨てるわけにも、いかないか…」
そう呟いて、彼女達を参戦させる覚悟を決める。
もちろん、戦闘用でもなくロクなプログラムも施されていない彼女達は、それほど強くない。
防御力とて人間と変わらない。
「3体、裏から回れ。脱出口を使って構わん。
 初撃が命だと心得て、戦闘位置をサーチしながら行動しろ」

2体を最後の守備に残し、計略を仕掛ける。
これが当たれば大逆転だ-----そう祈りながら、源五郎は神経質に部屋を歩き回った。

しかし。
源五郎の期待は大いに外れる事になる。


「千鶴姉…これ、なんだろう?」
大きなファンが遠くに見える。
今は止まっているが、動けば相当大きく空気を動かすのだろう。

「トンネルとかで圧力保持に使うファンに似てるけれど…」
小首を傾げて黒髪の女性が答える。

「うぐぅ…みんな、おんなじ顔だよぅ…」
足元には。
三体のロボットが倒れていた。

出会い頭に。
まさしく源五郎が調査中の、怪しい三人組に出会ってしまったのだった。


【七瀬留美、巳間晴香、合流。七瀬の鉄パイプ反滅、蝉丸の刀でも使ってください】
【HM-12は充電のため、しばらく大技なしでも可】
【千鶴、梓、あゆ裏口から施設侵入】

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