愚者達の行く末
結局、助かったのは自分だけだった。
里村さんはわざと自分の命を捨てた。
祐一はそれを追って、崖下へ飛び下りた。
この高さだ、落ちたら助からない。
残されたものは何だろう。
私は生きている。なつみさんは死んでいる。
死んでいる、よね。
祐一の荷物も、傍らにあった。
私達は、大馬鹿だ。
祐一を最期まで信じきらずに、自ら命を捨てた里村さん。
どうして信じてあげないの? あんなに真剣に、里村さんを思っていた祐一を。
簡単に諦めて、くだらない自己犠牲なんて。
はい、馬鹿一人目。
それを追って、崖から飛び下りた祐一。
もう助からないのはわかってたはずでしょう?
あなたの思いはわからないでもない。
でもあなたが死んだら、里村さんの犠牲が無駄になるだけなのに。
はい、馬鹿二人目。
そして、なつみさん。
撃ったでしょ、里村さんを。
ねぇ、どうしてそんなに簡単に人を殺そうとするの?
そんなにボロボロになってまで、何でそんなに殺そうとするの。
私にはわからないよ。馬鹿だよ、あなたも。
あ、私もだ。
私も教会で、人を一人刺したんだ。
あはは……絶対に殺したりしないって誓ったのに、何やってるんだろう?
やっぱり私達は、祐一についていくべきじゃなかったんだ。
教会で別れるべきだった、甘えてはいけなかった。
そうじゃなきゃ、皆死ななかったのに。
私達は、大馬鹿だ。
どうして私だけ生きてるんだろう。
生きている、生きている以上、私は生きるよ。
でもちょっと疲れたから、休みたい。
休みたい――。
「ぴこぴこっ!」
何か音が聞こえた、そんな気がした。
【椎名繭、また気絶】
【祐一の荷物は崖上】
【繭は祐一は死んだと思っている】
【最後の音は、言うまでもなくぴろ】